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第一章:パンデミック 01

「えっ、地震?」


古文の授業中、真後ろの席に座る向井地美音から、沢田渡(サワダワタル)はニュースを仕入れていた。

彼女は授業中にもかかわらず、スマホを触って、SNSのタイムラインを指先で軽くフリックしながら、流れるように見ていた。


「みたいだよ。東京の方で大きく揺れたって」

「でもこっち何もなかったじゃねえか」

「うーん、埼玉だからじゃない?」

「関係あるか、それ?」


授業が終わった後、渡は同じようにスマートフォンの画面をつけ、地震の追加情報について詳しく調べた。


「えっ・・・、北地区って・・・」


そこに記されていた文字を見つめ、彼は茫然としていた。

美音も彼の様子が気になり、同じ画面を覗き込んできた。


「北地区って、確か渡が前に住んでたところじゃなかった?」

「う、うん・・・」

「友達とか大丈夫・・・?」

「とりあえず連絡してみる」


そう言ってLINEのトップ画面を開いた渡は、以前住んでいた街に暮らす友人たちに、一斉にメッセージを送信した。