［＃ページの左右中央］

［＃表紙絵（img78_001.jpg、横[168×縦168]）入る］
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［＃ページの左右中央］

［＃１字下げ］Don't You Get It！［＃「Don't You Get It！」は大見出し］
［＃ここから１６字下げ］
［＃ここから２０字詰め］
黒瀬リュウ
［＃ここで字詰め終わり］
［＃ここで字下げ終わり］

［＃ページの左右中央］

［＃２字下げ］第一章：恋愛が苦手な男が恋をした。［＃「第一章：恋愛が苦手な男が恋をした。」は中見出し］

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［＃４字下げ］01［＃「01」は小見出し］

　男は一人でパーティー会場と向かっていた。周りを見渡すと、どの賓客たちも必ずと言っていいほど、お互いのパートナーを連れてきていた。
　男は受付の前で改めて招待状を確認した。そこには『パートナーを連れてくるように』などという言葉は一つも記されていない。自分は何一つ間違っていないのだ、と自信を取り戻したが、それでも心のどこかで疎外感を感じられずにはいられなかった。
「こんにちは、松岡と申します」
「松岡様ですね。招待状を拝見いたします」
　受付の女性に招待状を手渡し、男、松岡玲二はきゅっとネクタイを締め直した。
「松岡玲二様ですね。お待ちしておりました。どうぞ奥のほうへと進んでいただいて、パーティーをごゆっくりお楽しみください」
　彼女に一言礼を言うと、玲二はそのまま奥へと進んでいった。



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［＃４字下げ］02［＃「02」は小見出し］

　主賓の挨拶が済み、パーティーが始まった。
　得意先である大手の不動産企業の開業60周年記念パーティーとあって、財界の大物や政治家などが見受けられた。
　玲二は社長に挨拶を済ませると、ウエイトレスからシャンパンを受け取り、バイキングへと向かった。
　小さな皿の上に盛り付けられた食品を前に、玲二はどれをトレイの上に乗せるか悩んでいると、聞き覚えのある嫌な声が聞こえてきた。
「おやおや、これはこれは。キタガワコーポレーションの松岡くんじゃない」
「どうも、安田社長」
　安田昌大、玲二が勤めるキタガワコーポレーションのライバル会社であるNew RevolutionというIT企業の社長であった。
「久しぶりじゃない！元気にしてた？」
「まあ、それなりに健康状態には気を付けていますので」
「アッハッハ、相変わらず面白いこと言うね、君は」
　何ひとつ冗談を言った覚えはないのだが、勝手に肩に腕を回してきた彼に、玲二は不快感しか感じていなかった。
　玲二はこの男が苦手だった。何しろ年下の癖にやけに図々しいのである。
　こちらは二九歳、向こうは二四。社会的立場としては、相手の方が上であるため致し方ないとは思っていたが、ここまで図々しいと不快感しか覚えなかった。
「あれ、そういえば松岡くんって、いっつもこういうパーティーのとき一人だよね？彼女とか連れてこないの？」
「私はあくまでも仕事の一貫としてお邪魔してるので、その必要はないかと思いまして」
「そんな寂しいこと言わないでよ。せっかくのパーティーなんだから楽しんじゃえばいいのに」
「いえ、私はそういうわけには」
「あれ、もしかして、今彼女いないとか？」
　彼に痛いところを突かれてしまった。思わず返す言葉が見つからず、黙っていると、安田はそんな玲二を笑った。
「アッハッハ、なーんだ、そうだったら最初っから言ってよ！すっごい失礼なこと聞いちゃったじゃん！」
　今のその態度が一番の侮辱だと、玲二は心の中で怒りに震えていたが、なんとか抑えることができた。
「あっ、よかったら女の子紹介しようか？今付き合ってる彼女、モデルなんだけど、彼氏いない子とか多いらしいから、何人か紹介してあげるよ」
「いえ、そういうのは･･･」
「ああ、でも君には似合わないか。身長差がありすぎるもんね」
　遠回しに自分の低身長までもバカにされ、玲二の堪忍袋の緒はそろそろ限界寸前だった。
　このままこの場にいると、事件が起こりかねないと察した玲二はすぐさま立ち去ることにした。
「では、私はこれで」
「あっ、もう帰っちゃうの？気を付けてねー」
　彼自信には悪気があるわけではないようだが、それでも一つ一つの言動が玲二には気に食わなかった。


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［＃４字下げ］03［＃「03」は小見出し］

　安田の言動に腹が立ち、多少苛立ちながら人混みの中をかき分けていると、突然脇から現れた女性とぶつかり、彼女が持っていたシャンパンが自分にかかってしまった。
　

「ごめんなさい！大丈夫ですか！」
「あっ、いや、なんともないです」
　

　スーツに多少シミができたがその程度だった。だが、女性はあわてて持っていたナプキンで何とかそれを拭き取ろうと、人が少ない場所に玲二を連れ出した。
　

「本当にごめんなさい、クリーニング代出しますんで･･･」
「あっ、本当に大丈夫ですよ。ちゃんと前を見てなかった僕が悪いんですし」
　

　そこでようやく玲二は相手の顔をちゃんと見ることができた。
　一瞬で電気が自分の体に走ったような感覚がした。相手の周りには花びらまで待っているように見える。が実際はそんなことはなく、ただ彼女が心配そうにこちらを見つめてきているだけだった。
　

「あの･･･」
　

　いつまでも黙っていた玲二に痺れを切らしたのだろう。向こうから話しかけてきたのだ。
　だが彼は、あわてて立ち上がると何事もなかったかのように平然を装った。
　

「と、とにかく、本当に大丈夫ですんで。それじゃあ･･･！」
「あっ、ちょっと･･･！」
　

　彼女の制止も聞かず、彼はあわててパーティ会場を抜け出した。
　こういう所にいるということは、おそらく彼女も誰かと一緒に来ているのだ。
　素敵な美貌を持つ彼女をパートナーに持つ男が少しうらやましく思いながら、礼二はパーティー会場を後にした。



