［＃ページの左右中央］

［＃１字下げ］今夜調べてみました［＃「今夜調べてみました」は大見出し］
［＃ここから１６字下げ］
［＃ここから２０字詰め］
光圀
［＃ここで字詰め終わり］
［＃ここで字下げ終わり］

［＃改ページ］

［＃４字下げ］十回目の誕生日［＃「十回目の誕生日」は小見出し］

　福岡空港に一台の車がやってきた。
「ちょっと早すぎたな。」
　運転手である男、大塚光圀は窓を開けてアイスコーヒーを一口飲んだ。
「千尋。美晴。トイレ行くなら今のうちに行っておけよ。」
　今日は千尋の十回目の誕生日で、光圀の妻である莉乃が東京での仕事から帰ってくる日だ。
「じゃあ、俺行ってくる。」
「私も。」
　子供二人が車から降りるのを確認すると光圀は車をロックし、シートを倒して、仮眠をとりだした。
『コンコン』
「光圀。早く。」
　窓を叩くのは莉乃だった。
　光圀はシートを起こし、ロックを解除した。
「お帰り。」
　助手席に座る莉乃に光圀は半分寝ぼけながら声をかける。
「只今。子供達は？」
　ミーハーな人に騒がれないか多少ビクビクしていても、子供の心配をする莉乃は良い母になった。
「トイレだよ。下手すりゃママを探しているかもな。俺は美晴に電話かけるから、莉乃は千尋に電話かけてくれ。」
「その必要なさそうよ。」
　子供達にスマートフォンを持たせている為、子供達を呼び出そうとしたら、車の正面から手をふる二人がいた。
「和食党の光圀さん。今日はどちらまで？」
「回転寿司だけど。」
「あのときみたいね。」
「季節は逆だけどな。」
　夫婦で思い出を語りながら、笑い合っていると、子供達が車に乗り込んできた。
「どうしたの？」
「千尋が生まれてもう十年。ちょっと、思い出を話していただけさ。」
　思い出に変わりはない為、そう誤魔化した。
「父さん。早く回転寿司に行ってくれよ。」
「よく解ったな。」
「姉さんの誕生日で、父さんは和食党。しかも、ケチだからって姉さんが。」

「私、そんなこと言ってないって。」
　美晴が光圀の心中を当てたと思ったら、千尋の推理だったようだ。
　否定文を言う千尋の口調が早口になっていた為、簡単に光圀と莉乃は理解した。
「お腹も空いたし、行くか。と思ったけど、今度は俺がトイレ。」
「ちょっと、お父さーん。」
　何気ない幸せがここにあった。


［＃改ページ］

［＃４字下げ］プレゼント［＃「プレゼント」は小見出し］

　光圀、莉乃、千尋、美晴は家に帰ってきた。
「美晴。早くお風呂に入って、歯磨きして寝ろよ。」
「はーい。」
「千尋にはプレゼントタイムだ。」
「やったー。」
　リビングに跳ねながら行く千尋を見て、光圀が微笑んでいると、その腕を引っ張る人物がいた。
　心配そうな顔をした莉乃だった。
「本当に良いの？もう十年くらい待った方が。」
「本来、怯えるのは俺なのに、何を怯えているんだ。」
「家族がバラバラになりそうな気がしてちょっと怖いのよ。」
「家族だからこそ。俺は知っておいてほしい。まぁ、どう動くかはあの子しだいだ。」
「わかった。」
　莉乃は寝室にプレゼントを取りに行った。
「お待たせ。」
「相変わらず仲良いよね。お父さんとお母さん。」
「十二年付き合った腐れ縁だからな。」
「プレゼントって？」
　千尋の目の輝きがすごく、純粋に輝いていた。
「課題を出すことにした。」
「何？海遊館へのひとり旅？」
「私から新しい水着。」
「俺からは作文。自分史を書くんだ。」

「自分史ってどんなことを書けば良いの？」
「千尋が今まで経験してきたことや感じたことを文章にするんだ。物心がつく前のことは俺達が教えてあげるさ。昔から言っているだろう。知らなかったら聞いてみろって。」
「わかった。いつまでにやった方が良いとかある？」
「ないよ。原稿用紙十枚は使ってくれよ。」
「父さん。母さん。姉さん。出たよ。」
　美晴がお風呂から上がったらしい。
「千尋。お風呂入って、歯磨きして今日は寝なさい。」
「はーい。」
「父さん。牛乳、後一杯分だから、また買ってきて。」
「わかった。」
　この家庭が変化してしまうことに恐怖を少なからず莉乃は感じていた。&nbsp;


［＃改ページ］

［＃４字下げ］自分がどういう人物か？［＃「自分がどういう人物か？」は小見出し］

　千尋は学校の宿題を終わらせると、原稿用紙を取りだし、鉛筆を走らせる。
『私の名前は大塚千尋。二千十七年六月十七日生まれ。血液型エー型。お父さんが千九百九十年八月十八日生まれの大塚光圀。血液型エー型。お母さんが千九百九十二年生まれの大塚莉乃。血液型オー型。そして、弟の大塚美晴の四人で生活している。』
　そこまで書いて、千尋はスマートフォンに手を伸ばし、母、莉乃について検索をかけた。
　両親が芸能活動に関わっていると調べるのが楽である。
　千尋は、母がＨＫＴを脱退したときと自分の誕生日の矛盾に気が付いた。
　母が脱退したのは九月、自分の誕生日は六月。
　ませていて、知識を持っていた千尋にとって父光圀と母莉乃が脱退前から交際していたことをデータを読んだだけで気が付いた。
　事実を確かめる為に、千尋は一階に降りて、母莉乃を探した。
「お母さん。教えて。」
「勉強はお父さんに聞いてっていつも言っているでしょ。」
　莉乃の料理の手は止まる気配がない。
「お父さんといつから交際していたの？」
「へ？」
　たった一つの質問が莉乃の手を止めた。
「お母さんがアイドルを辞めたのは九月なのに、私が六月に生まれているっておかしいもん。十ヶ月前に交際、結婚していないと子供は生まれないんでしょ？」
「・・・千尋。本当のことを知っても私とお父さん、光圀の子供でいられる？」
「それは昔から変わらないよ。何かあるなら、私は知りたい。」
「お父さんがマネージャーしていて、過労で倒れて、お母さんはこの家に押しかけたの。お父さんが倒れたときに好きだって気が付いたから。そして、捻挫事件が起こって、お父さんも好きって言ってくれたから。ルール破って、交際して、あなたが生まれた。」
「よく家の場所知っていたね。」
「お母さんはお父さんの前に劇場支配人やっていて、職権乱用しただけよ。」
「そっか。」
　千尋は自分の誕生の真実を知った。
「千尋、手伝って。」
「はーい。エプロンしてくる。」
　千尋がキッチンから出て階段を上る音を聞いて、莉乃は息を吐いた。
「確かに間違いじゃないから。」
　真実は光圀に自分と他のメンバーが誘拐され、偽りの夫婦を演じて、お互いが本気になったこと。
　自分が光圀を犯罪者にしない為に、マネージャーにさせて、罪悪感から光圀が無茶をして、過労で倒れるという前の話が存在すること。
　真実を教えて、子供達が傷付くのが怖いのだ。
　一枚上手な千尋は母莉乃の呟きを階段で聞いているのだった。
（お父さんが悪い人だとは思えない。）


［＃改ページ］

［＃４字下げ］初めてのお使い・前編［＃「初めてのお使い・前編」は小見出し］

　大塚千尋小学一年生（六歳）、大塚美晴幼稚園年中さん（四歳）。
「頼む。この通りだ。」
　光圀は妻莉乃に頭を下げていた。
「まぁ、そういう番組あるし、イオンのフードコートの注文止まりじゃ、恥ずかしいところはあるけど、天神までって遠いでしょ？」
　早くて幼稚園児が始めている初めてのお使いとして、天神（ＨＫＴ劇場）まで光圀が忘れ物をしたという設定で千尋、美晴に届けさせるというのが光圀のシナリオだ。
「忘れたのか？前に俺が忘れ物して、莉乃が届けてってことあったろ？」
「また、腰に手をあてて、千尋がここまで似たものね。」
　光圀は、熱が入ると手を腰にあてて、喋る。
　キッズコーナー（靴を脱いで入る子供の遊び場）で千尋に美晴のお守りを頼んで莉乃がトイレに行って戻ってきたとき、美晴の前で千尋が腰に手をあてている場面に遭遇した。
　理由を聞くと、美晴が別の子とケンカを始めて、相手の子はそのお母さんが止め、千尋は美晴を止めて、その相手の親子は用事ができて帰ったが、美晴がまたケンカしないように監視とお説教をしていたところらしい。
「分かった。行かせよう。また光圀が忘れ物しても良いように。」
「問題は何を届けさせるかだけど。」
「決まっていないのね。」
　まずは、忘れ物を何にするかかららしい。


［＃改ページ］

［＃４字下げ］初めてのお使い・後編［＃「初めてのお使い・後編」は小見出し］


光圀はＵＳＢメモリを忘れたことにして、出勤した。<div>
実際はきちんと持っていて、新しく購入したものを用意したのだが。</div><div>
「運転中にごめんね。ＵＳＢメモリ忘れていったから。・・・え？届けてくれって？仕方ないな。今度買い物行ってよね。」</div><div>
どっかの棒読みな子よりマシな演技を莉乃はした。</div><div>
「お母さん。何かあったの？」</div><div>
千尋の側で電話をしていたのもあって、千尋が莉乃に心配そうに話しかけてきた。</div><div>
「お父さんが仕事道具忘れて。私、元メンバーだから騒ぎになりそうだし・・・。千尋。美晴と一緒に届けてきて。」</div><div>
名案を思いついたように千尋に頼む莉乃だった。</div><div>
「良いよ。この前お父さんに電車の乗り方は教わったし、そういう勉強でしょ？」</div><div>
光圀似なので、千尋にはバレバレなようだ。</div><div>
「地下鉄空港線、天神駅まで行くのよ。」</div><div>
「紙に書いてよ。美晴を連れてくるから。」</div><div>
千尋がやる気満々なのが伝わってきた。</div><div>
「美晴。お姉ちゃんとお出かけに行くよ！」</div><div>
〇</div><div>
最寄り駅までは莉乃も同行したが、改札からは子供二人だけだ。</div><div>
子供達が地下に降りていくと莉乃は光圀に連絡を入れた。</div><div>
『子供達、出発したよ。』</div><div>
『了解。ところで今何してる？』</div><div>
『駅から家に帰って、家事。心配なら、監視カメラで見なさい。』</div><div>
『昼寝に走るなよ。』</div><div>
〇</div><div>
「姉さん。真っ暗だね。」</div><div>
「地下鉄なんだから仕方ないでしょ。」</div><div>
「昼寝して良い？」</div><div>
「良いよ。」</div><div>
美晴が眠りにつくと千尋もあくびをした。</div><div>
「お嬢ちゃん。どこまで行くんだい？」</div><div>
向かい側に座っていた老婆が千尋に歩み寄ってきた。</div><div>
「天神です。お父さんに届けものがあるので。」</div><div>
「立派だね。私、赤坂、その前の駅まで行くから、降りるときに起こしてあげよう。」</div><div>
「良いんですか？お婆さん。」</div><div>
「あぁ。良いとも。」</div><div>
「ありがとうございます。」</div><div>
千尋も眠りについた。</div><div>
『みっちゃん。子供達には地下鉄が退屈みたいよ。』</div><div>
千尋に声をかけた老婆の正体は隣の宮田さんの変装した姿である。</div><div>
『僕も昔、そうでした。子供達をお願いします。』</div><div>
〇</div><div>
「お嬢ちゃん。もうすぐ赤坂だよ。」</div><div>
「へ？お婆さん。ありがとうございます。」</div><div>
「お父さんにちゃんと会うんだよ。」</div><div>
「はい。美晴、起きて。」</div><div>
赤坂で老婆（宮田さん）は降りていった。</div><div>
「姉さん。ここどこ？」</div><div>
「次で降りるよ。」</div><div>
「はーい。」</div><div>
電車が天神駅に着き、千尋と美晴が改札を抜けると見慣れた顔があった。</div><div>
「お父さん！？」</div><div>
「二人共、よく来れたな。退屈で寝るならまだまだだけど。」</div><div>
「なんでお父さんがそのことを知っているの？」</div><div>
「お前達が心配でお隣さんに変装して同行してもらったんだ。」</div><div>
「何かご褒美ちょうだい。」</div><div>
美晴がおねだりをしだした。</div><div>
「ちゃんと用意してあるよ。さぁ、劇場に行こう。」</div><div>
三人は劇場に手をつないで歩いていった。</div>

［＃改ページ］

［＃４字下げ］ご褒美タイム［＃「ご褒美タイム」は小見出し］

　光圀に連れられて、千尋と美晴は劇場にやってきた。
「色男。子連れでどうした？」
　まずは、尾崎さんに遭遇した。
「尾崎さん。娘と息子です。お使いに来させました。ほら、千尋。美晴。挨拶して。」
「大塚千尋です。お父さんがいつもお世話になってます。」
「大塚美晴です。お邪魔します。」
「色男。良い教育しているな。」
「家内がおっかないだけですよ。」
「まぁ、相談室にでも連れていきな。」
「はい。ありがとうございます。」
　そんな会話をしながらもメンバーの控え室に三人は足を進めた。
『コンコン』
「みんな。紹介しよう。俺の娘、千尋と息子の美晴だ。ちょっと俺は席を外すから、面倒見てあげてくれ。」
「はーい。」
　光圀が控え室から出ると、一人の女性がやってきた。
「千尋ちゃんに美晴君ね？私のこと知っている？」
「田島芽瑠さんですよね？」
「正解。」
「さしこちゃん。お母さんは元気？」
「はい。」
「あの、一つ聞いても良いですか？」
「良いよ。」
「お父さんとお母さんって、どうだったのかなって。」
　田島は自分もそうだが、光圀に誘拐されていたとは言えないと思って、頭の中で言葉を作りだしていった。
「千尋ちゃんが生まれる前にお父さんとお母さんと私ともう一人と回転寿司に行ったことがあって、そのときから夫婦みたいだったよ。」
　実際は夫婦として共同生活をしていたが故の演技でもあったが、間違いのない真実である。
「只今」
　光圀が大きな皿を持って、帰ってきた。
「このこと、お父さんには内緒ね。」
「はい。」
「田島。変なこと吹き込んでないよな？」
「ガールズトークですよ。」
「そういえば、美晴は？」
　探してみるとメンバーに囲まれて、デレデレしていた。
「お前ら、集合！」
　皿にかけていた覆いを外した。
　そこには均等に分けたホールのショートケーキがあった。
「千尋と美晴が頑張ったからご褒美、メンバーには差し入れな。」
　メンバーは蟻のごとく、ケーキに群がった。
「いただきます。」
　メンバーと子供達の元気な声を聞いて、光圀は微笑んでいた。


