爽やかな朝、彼女はリクルートスーツに袖を通し、鏡の前に立った。
ここまでやるべきことはやり遂げた。あとは自分を信じて笑顔で挑むだけだった。
口角を上げてにっこりと微笑む練習をしてから、彼女は部屋を出た。
「履歴書は、ちゃんと入れた?」
「入れた入れた」
「お弁当は入ってる?」
「大丈夫」
「お母さん、ここで待ってるから。どんな結果でもまっすぐ帰ってきなさい」
「分かってるよ、もう子供じゃないんだから」
靴べらを使ってヒールに足を入れた彼女はゆっくりと立ち上がって
後ろを振り返った。
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
母親に背中を押され、松井珠理奈は元気よく家を飛び出していった。