男は一人でパーティー会場と向かっていた。周りを見渡すと、どの賓客たちも必ずと言っていいほど、お互いのパートナーを連れてきていた。
男は受付の前で改めて招待状を確認した。そこには『パートナーを連れてくるように』などという言葉は一つも記されていない。自分は何一つ間違っていないのだ、と自信を取り戻したが、それでも心のどこかで疎外感を感じられずにはいられなかった。
「こんにちは、松岡と申します」
「松岡様ですね。招待状を拝見いたします」
受付の女性に招待状を手渡し、男、松岡玲二はきゅっとネクタイを締め直した。
「松岡玲二様ですね。お待ちしておりました。どうぞ奥のほうへと進んでいただいて、パーティーをごゆっくりお楽しみください」
彼女に一言礼を言うと、玲二はそのまま奥へと進んでいった。