安田の言動に腹が立ち、多少苛立ちながら人混みの中をかき分けていると、突然脇から現れた女性とぶつかり、彼女が持っていたシャンパンが自分にかかってしまった。
「ごめんなさい!大丈夫ですか!」
「あっ、いや、なんともないです」
スーツに多少シミができたがその程度だった。だが、女性はあわてて持っていたナプキンで何とかそれを拭き取ろうと、人が少ない場所に玲二を連れ出した。
「本当にごめんなさい、クリーニング代出しますんで・・・」
「あっ、本当に大丈夫ですよ。ちゃんと前を見てなかった僕が悪いんですし」
そこでようやく玲二は相手の顔をちゃんと見ることができた。
一瞬で電気が自分の体に走ったような感覚がした。相手の周りには花びらまで待っているように見える。が実際はそんなことはなく、ただ彼女が心配そうにこちらを見つめてきているだけだった。
「あの・・・」
いつまでも黙っていた玲二に痺れを切らしたのだろう。向こうから話しかけてきたのだ。
だが彼は、あわてて立ち上がると何事もなかったかのように平然を装った。
「と、とにかく、本当に大丈夫ですんで。それじゃあ・・・!」
「あっ、ちょっと・・・!」
彼女の制止も聞かず、彼はあわててパーティ会場を抜け出した。
こういう所にいるということは、おそらく彼女も誰かと一緒に来ているのだ。
素敵な美貌を持つ彼女をパートナーに持つ男が少しうらやましく思いながら、礼二はパーティー会場を後にした。