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第一章:恋愛が苦手な男が恋をした。 03

 安田の言動に腹が立ち、多少苛立ちながら人混みの中をかき分けていると、突然脇から現れた女性とぶつかり、彼女が持っていたシャンパンが自分にかかってしまった。


「ごめんなさい!大丈夫ですか!」

「あっ、いや、なんともないです」


 スーツに多少シミができたがその程度だった。だが、女性はあわてて持っていたナプキンで何とかそれを拭き取ろうと、人が少ない場所に玲二を連れ出した。


「本当にごめんなさい、クリーニング代出しますんで・・・」

「あっ、本当に大丈夫ですよ。ちゃんと前を見てなかった僕が悪いんですし」


 そこでようやく玲二は相手の顔をちゃんと見ることができた。

 一瞬で電気が自分の体に走ったような感覚がした。相手の周りには花びらまで待っているように見える。が実際はそんなことはなく、ただ彼女が心配そうにこちらを見つめてきているだけだった。


「あの・・・」


 いつまでも黙っていた玲二に痺れを切らしたのだろう。向こうから話しかけてきたのだ。

 だが彼は、あわてて立ち上がると何事もなかったかのように平然を装った。


「と、とにかく、本当に大丈夫ですんで。それじゃあ・・・!」

「あっ、ちょっと・・・!」


 彼女の制止も聞かず、彼はあわててパーティ会場を抜け出した。

 こういう所にいるということは、おそらく彼女も誰かと一緒に来ているのだ。

 素敵な美貌を持つ彼女をパートナーに持つ男が少しうらやましく思いながら、礼二はパーティー会場を後にした。