「えっ、地震?」
古文の授業中、真後ろの席に座る向井地美音から、
彼女は授業中にもかかわらず、スマホを触って、SNSのタイムラインを指先で軽くフリックしながら、流れるように見ていた。
「みたいだよ。東京の方で大きく揺れたって」
「でもこっち何もなかったじゃねえか」
「うーん、埼玉だからじゃない?」
「関係あるか、それ?」
授業が終わった後、渡は同じようにスマートフォンの画面をつけ、地震の追加情報について詳しく調べた。
「えっ・・・、北地区って・・・」
そこに記されていた文字を見つめ、彼は茫然としていた。
美音も彼の様子が気になり、同じ画面を覗き込んできた。
「北地区って、確か渡が前に住んでたところじゃなかった?」
「う、うん・・・」
「友達とか大丈夫・・・?」
「とりあえず連絡してみる」
そう言ってLINEのトップ画面を開いた渡は、以前住んでいた街に暮らす友人たちに、一斉にメッセージを送信した。