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第一章:パンデミック #03

こうして勢いよく自転車に乗り、ワタルは東京へと向かっていた。

予めナビアプリで埼玉~東京間の距離と時間を検索した際には、およそ二時間三十分と表示されていた。

電動だし、急いで漕いで恐らく一時間半、丸一日あれば、友達の様子も確認して、すぐに家に帰れるだろう。そう簡単に思っていた。

だが、道を急ぐ彼に思わぬアクシデントが起きた。タイヤの空気漏れによるパンクである。


「マジかよ、最悪じゃねえか」

「どないしました?」


道端に自転車を停め、タイヤの様子を確認していると、目の前に一台のロードバイクが止まった。

ワタルが顔を上げると、洒落たヘルメットを被り、サングラスをかけた男がこちらを見ていた。


「ちょっとタイヤがパンクしちゃって」

「ああ、それは災難でしたね。しかもこんなところでパンクは大変だ」

「どこかに修理してくれるところってないですかね」

「ああ、どうやろ。この辺の者やないもんでね」


ロードバイクの男の周りには大きな荷物が一、二個バイクに吊るされてあった。

彼なら何か修理用具を持っているかもしれない。そう思ったワタルは男にお願いをしようとした瞬間、男はじゃあと言い捨て、彼を残して走り去っていった。


「はあ!?」


困っている人間が目の前にいるというのに、何もしないのかと現代社会に生きる人間の薄情さを勝手に感じていたワタルだった。