「東京に行く!?」
登校中、私服姿で自転車を漕いでいた渡を見かけた美音は、学校とはまったくもって反対側の方向へ向かおうとする彼をあわてて引き留めた。
「おう、皆のことが心配だからな」
「学校はどうすんのよ。明日模試だよ?」
「明日までに戻ってくればいい話だろ」
「東京まで何時間かかると思ってんのよ、しかも自転車って」
「とにかく、俺は行くと決めたら行くんだ」
そう言って再びペダルに足をかけた彼の腕を美音は掴んだ。
「ダメだって!おばさんたちにバレたら怒られるよ?」
「だからお前に言ってんじゃねえか。おまえの家にしばらく泊まるって言ってるから」
「ちょっ、勝手なこと言わないでよ!」
「とにかく、頼んだぞ!あっ、ノートも取っておいてくれ!」
美音の腕を振り払った渡は自転車を漕ぎ、彼女からどんどん遠ざかって行った。