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光圀、莉乃、千尋、美晴は家に帰ってきた。

「美晴。早くお風呂に入って、歯磨きして寝ろよ。」

「はーい。」

「千尋にはプレゼントタイムだ。」

「やったー。」

リビングに跳ねながら行く千尋を見て、光圀が微笑んでいると、その腕を引っ張る人物がいた。

心配そうな顔をした莉乃だった。

「本当に良いの?もう十年くらい待った方が。」

「本来、怯えるのは俺なのに、何を怯えているんだ。」

「家族がバラバラになりそうな気がしてちょっと怖いのよ。」

「家族だからこそ。俺は知っておいてほしい。まぁ、どう動くかはあの子しだいだ。」

「わかった。」

莉乃は寝室にプレゼントを取りに行った。

「お待たせ。」

「相変わらず仲良いよね。お父さんとお母さん。」

「十二年付き合った腐れ縁だからな。」

「プレゼントって?」

千尋の目の輝きがすごく、純粋に輝いていた。

「課題を出すことにした。」

「何?海遊館へのひとり旅?」

「私から新しい水着。」

「俺からは作文。自分史を書くんだ。」

「自分史ってどんなことを書けば良いの?」

「千尋が今まで経験してきたことや感じたことを文章にするんだ。物心がつく前のことは俺達が教えてあげるさ。昔から言っているだろう。知らなかったら聞いてみろって。」

「わかった。いつまでにやった方が良いとかある?」

「ないよ。原稿用紙十枚は使ってくれよ。」

「父さん。母さん。姉さん。出たよ。」

美晴がお風呂から上がったらしい。

「千尋。お風呂入って、歯磨きして今日は寝なさい。」

「はーい。」

「父さん。牛乳、後一杯分だから、また買ってきて。」

「わかった。」

この家庭が変化してしまうことに恐怖を少なからず莉乃は感じていた。