光圀に連れられて、千尋と美晴は劇場にやってきた。
「色男。子連れでどうした?」
まずは、尾崎さんに遭遇した。
「尾崎さん。娘と息子です。お使いに来させました。ほら、千尋。美晴。挨拶して。」
「大塚千尋です。お父さんがいつもお世話になってます。」
「大塚美晴です。お邪魔します。」
「色男。良い教育しているな。」
「家内がおっかないだけですよ。」
「まぁ、相談室にでも連れていきな。」
「はい。ありがとうございます。」
そんな会話をしながらもメンバーの控え室に三人は足を進めた。
『コンコン』
「みんな。紹介しよう。俺の娘、千尋と息子の美晴だ。ちょっと俺は席を外すから、面倒見てあげてくれ。」
「はーい。」
光圀が控え室から出ると、一人の女性がやってきた。
「千尋ちゃんに美晴君ね?私のこと知っている?」
「田島芽瑠さんですよね?」
「正解。」
「さしこちゃん。お母さんは元気?」
「はい。」
「あの、一つ聞いても良いですか?」
「良いよ。」
「お父さんとお母さんって、どうだったのかなって。」
田島は自分もそうだが、光圀に誘拐されていたとは言えないと思って、頭の中で言葉を作りだしていった。
「千尋ちゃんが生まれる前にお父さんとお母さんと私ともう一人と回転寿司に行ったことがあって、そのときから夫婦みたいだったよ。」
実際は夫婦として共同生活をしていたが故の演技でもあったが、間違いのない真実である。
「只今」
光圀が大きな皿を持って、帰ってきた。
「このこと、お父さんには内緒ね。」
「はい。」
「田島。変なこと吹き込んでないよな?」
「ガールズトークですよ。」
「そういえば、美晴は?」
探してみるとメンバーに囲まれて、デレデレしていた。
「お前ら、集合!」
皿にかけていた覆いを外した。
そこには均等に分けたホールのショートケーキがあった。
「千尋と美晴が頑張ったからご褒美、メンバーには差し入れな。」
メンバーは蟻のごとく、ケーキに群がった。
「いただきます。」
メンバーと子供達の元気な声を聞いて、光圀は微笑んでいた。