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秋元先生が出て行った瞬間、何故か緊張感満載だったクラスから緊張が和らぎまた雑談が始まっていた。

ゆりあが話しかけてきた。

「にしても、君ってそんなに速かったんだね。てっきり私、全国で最下位だったけどなんか特待もらえちゃいました、みたいな人だと思ってた」


「んなわけあるか!そういうゆりあはこの学校に最下位で入学したんだろ?」

「うぐ・・・ま、まぁそんなところかな。あ、でも霧崎くんよりは偉いよ多分!」

「へぇんじゃ問題。2+3×4は!」

「ふふ、20だ!」
やっぱりバカだった。

「バーカ。答えは14でした」

「そんなことない!20!」

「落ち着いて考えてみろ。14だから」

「えっと・・・2と3を足して・・・」

「先に掛け算だろバカ」

「バカバカ言わないでよバカ!」

「だってこれ小学生でも解けるぞ?」

「うっ・・・わ、わかってたけどわざと間違えてあげたんだからねっ!」


結局、入学時のワースト1位を発見できたのでいい収穫になった。
実際、俺もそこまで賢くはないのだが小学生が解ける問題は解ける。
ゆりあとのバカ対決に勝利したのはいいのだが何かを忘れている気がする。気がつけば先ほどまで雑談をしていたはずの生徒が綺麗にいなくなり黒板にでかでかと文字が書かれている。

“木崎さんと末永くお幸せに”

何故か勝手にゆりあと付き合っている設定にされていた。ゆりあも前の黒板に気がついたらしく少しだけビックリしていた。普通は慌てて黒板を消すのだが人がいないからいいやと言う考えなのか単に意味を理解していないかのどちらかだろう。

そして黒板の隅っこには今日の日程が書いてあった。ど真ん中の謎メッセージに気が行き過ぎて気づかなかったがどうやら担任の挨拶が終わったあとは入学式らしい。
だからみんないないのか・・・ん?入学式?え?なにそれ。
「ゆ、ゆりあ!今すぐ体育館に行くぞ!」

「へっ?なんで?」

「このあと入学式なんだよ!」

ゆりあもやっと思い出したらしく慌てていた。

「ど、どうしよう。忘れてた」
学校まで来て入学式を忘れるとは不覚だったがウジウジしている暇はない。
俺はゆりあの手を握り全速力で教室を飛び出した。