14時45分 地下1階エントランス 地下駐車場
バンから降りた益田は急いで部長に確認の電話を掛けた。
「あ、もしもし。部長、ちょっと新人が来るなんて聞いてませんよ!」
どうやら益田は普段、この会社を一緒に担当している林ではなく、新人の飯塚が来たことに不服を立てているらしい。しかし電話の相手は、全くそのことに悪びれている様子はなかった。
「仕方ないだろ、担当の林が風邪で寝込んだって言うんだから」
「いや、それは分かりますけど・・・」
「新人って言っても、面接のときに20年近く清掃現場で働いてたって言ってたから、仕事は出来るはずだ」
「いや、でも僕に新人研修なんか・・・」
「頼んだぞ」とだけ言葉を残され、電話を一方的に切られた。
一つ溜め息をついた益田は、バンの後方に回ると、荷物を大量に乗せて、何とか一人で台車を降ろそうともたついている飯塚の姿があった。
「何やってるんですか」
「あ、ちょっと手伝ってもらえますか」
「そんなに乗せたら危ないですよ」
そんなこともわからないのか、益田は心の中で悪態をついて、渋々一緒に台車を降ろした。