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「あそこのラーメンのスープ、ホントよく出来てますよね!」

「鳥と魚介のWスープ、配合難しいと思うんやけど、よくあのバランス見つけたよね!」

「あとチャーシューと煮卵、あれ全然手抜いてないですよ!」

「そうそうそう!あー、ダメだ。今日の帰り、絶対行こっと!」


 横山と棚村が揃うと、必ず盛り上がるのがラーメンの話題であった。横山が今夜の予定を高らかに宣言すると、棚村は羨ましそうな顔で見つめた。


「あっ、僕も行きたい!けど、今日は無理だよな…」

「へへへっ、私は行こっと」

「由依さん」


 横山が得意げな顔でカプチーノを飲んでいると、後輩の田口愛佳が声をかけてきた。


「受付でロニー生命保険の富岡さんって人が来ているみたいなんですけど」

「誰やろ・・・?ありがと、すぐ行く」


 カプチーノを飲み干した横山は、カップを置き、「ごちそうさま」と一言残して、ピリラニ・コーヒーを後にした。

 横山を爽やかな笑顔で送り出した棚村は、彼女が残したカップの片付けをしようとすると、備え付けの電話が鳴り響いた。


「はい、ピリラニ・コーヒーです」

「15階のセキュリティーセンターですけど、注文いいですか」

「あ、はい。どうぞ!」


 元気に応えた棚村は、注文をすぐにメモに取り出した。