友梨奈「まぁ、いいや。
今日は、これで終わりにしようか?まだ学校始まったばっかだし、先輩たちが来るのも明日からだから今日はもう帰ろうか?」
友梨奈が声をかけるとみんな口々に色々なことを話しながら帰る準備を始めた。
瑞穂「ってかさ~加藤…もう奏翔って呼んでいいか?
奏翔はさ、誰と方向一緒?一緒に帰ってうちら、バスケ部の話聞いときなよ。」
奏翔「みんなは、どっちの方向なんですか?」
瑞穂「うちは、こっから最寄りの駅、電車で通ってるし。」
美愉「瑞穂と反対方向だよ。
逆に菜緒ちゃんと、てちは、うちの近所だね。」
美愉の言葉に、友梨奈と菜緒は静かにうなづいてニコッと笑った。
愛佳「うちは、すぐ分かれるけど、理佐と同じ方向なことは同じだよ。」
理佐「愛佳は、こっちの方向にある体育館の近くだし、うちはその逆のデパートがある近くってことくらいだけどね?」
奏翔「僕は、土生先輩と同じです。電車で通ってるわけじゃないけど、駅の近くなので…」
奏翔は、瑞穂を見ると急に落ち込んだような気持ちになった。
人に興味のない、奏翔が人目を惚れをしてしまったのもあるが、ツンケンしているイメージがあるため仲良くなれるかどうかも分からない。
友梨奈「ってことで、瑞穂よろしく!まぁ、後輩だからっていじめないでってのと入部してくれるようにちゃんと話してね?」
瑞穂はOKサインを出すと困ったような顔をして肩を竦めた。
美愉「じゃ、また明日。奏翔が来てくれるの楽しみにしてるよ。
菜緒ちゃんも先輩たちも、いる前で初めて練習になるけど緊張しないでね♪」
美愉が菜緒に声をかけると頭を下げ、それぞれが異口同音に「帰ろう」と言って歩き出していった。
瑞穂と奏翔は、みんなが出ていってしばらくしてから体育館をあとにした。
荷物を片付けるのに手こずっていたというフリをしていただけなのだが……
瑞穂「奏翔行くよ。
なんで、片付けてないんだよ。」
奏翔「ごめんなさい、さっきのみんなに見とれちゃってて…」
奏翔は、正直な理由を言った。
瑞穂「さっきはさ、ごめん。
あんたのこと見返せたからいいんだけどさ、試合とかでもそうなんだよね。負けず嫌いだからさ。」
瑞穂は少し申し訳なさそうな顔をして奏翔を見ると優しげな声を出して言った。
奏翔「大丈夫ですよ。
あ、それと土生先輩には先に言っときますね?僕、マネージャーやります。」
瑞穂「それは嬉しいけどさ。
なんでうちだけに言うんだよ。」
奏翔の言葉に「ん?」と声を出すと笑いながらも不思議そうな顔をして聞いてきた。
奏翔「いや、一緒に帰ってるの土生先輩しかいないから土生先輩には言っとこうかなって思ったんですよ。」
瑞穂「そういうことね。
ってか土生先輩って辞めてくんね?普通に瑞穂でいいよ。
うちは、先輩とか関係ないし。」
奏翔「もし万が一にでも慣れたらそうやって呼びますね。」
奏翔と瑞穂は、何気ない会話をしていたが、目の前にはもう最寄りの駅があった。
一人で帰ると時間が長く感じるが、会話をしながら帰ると時間が短く感じるのは本当だったんだなと奏翔は感じた。
瑞穂「奏翔さぁ、あんた分かりやすいよ。
愛佳にも何考えてるか当てられてたじゃん?うちも1個わかったことあるんだよね。」
奏翔「分かったこと?
それが間違ってたら僕はどうすればいいんですか?」
瑞穂「まぁ、無視すればいいさ。じゃ、うちが思ったことはあんた、うちらの誰かに一目惚れしてるっしょ。
冗談だよ、じゃあまた明日な!」
瑞穂は、話しながら駅の方に歩いていきながら思ったことを言って後ろを振り向かずに手を振った。
奏翔は、それだけ幸いだと思っていた。
もし振り向かれれば、顔を真っ赤にしてまさにそうです。という反応を見られなくて済むのだから。