今日見たことは誰にも言わないようにと、校長の毛利に釘を刺された。
その帰り道のことだった。
ふと普段と違う帰り道を帰りたくなり、海沿いを自転車に乗って走っていた。
潮風が気持ちよく、とてもすがすがしい気持ちになり、今日感じた何か嫌なこともすべて吹き飛ばされていくようだった。防波堤のそばを走っていると、何か鈍い音がした。
急ブレーキをかけ、自転車から降り、防波堤を上ってみると、複数の女子生徒たちが殴り合いの喧嘩をしていた。馬路須加女学園の生徒と他校の生徒の喧嘩だった。だが殴り合いと言っても、マジ女側が五人に対し、相手は十数人という一方的な人数で、フルボッコにあっていた。
「おい!何やってるんだ、君たち!」
大きな声で深山が叫ぶと、他校の生徒たちは慌てて逃げだした。
その場には口元から血を流しながら倒れている、五人の生徒だけが取り残された。
「大丈夫か・・・?」
「アンタ・・・、教育実習の・・・」
「先公が、口挟んで来るんじゃねえよ・・・」
小豆色のジャージを身にまとった彼女たちは、それぞれ腕や足をかばいながら、立ち上がってその場を立ち去ろうとした。
深山は最初、黙ってその背中を見ていたが、彼女たちの目を見た時、ふと何か思い当たるものを感じた。そしてそれが何だったのか思い出す前に、先に口が開いていた。
「お前ら、うち来るか?」
「は・・・?」
四人は驚いた表情ですぐに振り返り、先を歩いていた指空きグローブを付けていた彼女は、ゆっくりとこちらを振り返って、深山を睨みつけていた。