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第一章『現れた教育実習生』 06

 職員室に向かっている途中、山村はトイレに向かうから先に職員室に戻っていてくれと言ってどこかへ消えていった。

 トイレというのは口実で、本当は煙草でも吸いに行ったのだろう。洋服のポケットから煙草の箱がちらっと見えていた。

 仕方なしに一人で職員室に向かっていると、初日の上に入り組んだ迷路のような学園の中で、同然の如く迷子になってしまった。

 外の景色と記憶を頼りに校舎を歩いていると、正門から後者に向かって歩いてくる一人の女子生徒が見えた。

 他の学生とは違って、派手な服装をしているわけでもなく、髪形も全く派手にもっているわけでもない。

 いたって普通の学生に見える彼女もいわゆる《落ちこぼれ》なのだろうかと気になったが、彼は急いで職員室へと帰って行った。