文字サイズ:

第一章『現れた教育実習生』 07

 深山が見かけた少女は学校に入ると、教室に向かわずに、階段をのぼって行った。

 その先にはマジ女生徒の間でもごく限られたものしか立ち入ることが出来ない、最強の喧嘩集団、ラッパッパがたむろする吹奏楽部の部室である音楽室があった。

 彼女がそのドアを開けると、すでに三人の生徒が部屋の中で談笑していた。

「おはようございます」

「おう、さくら。おはようさん」

 赤色のスタジャンを着た女生徒が彼女に話しかけた。少女は軽く会釈をすると、教室内を見渡した。

 中ではピンクのスタジャンを着た生徒が、台座の上でヨガの瞑想ポーズを取りながら、目を閉じて精神統一をしている生徒に話しかけていた。

「なあなあ、今度の休みさ、一緒に合コンいかね?」

「瞑想中だ、よそでやれ」

「そんなこと言わないでさ、たまにはお前も男と触れ合ったりした方がいいって」

「私は男なんかに媚びは売らない」

 そんな彼女たちを横目に、少女は部室の奥に鎮座されてある一人掛け用のソファーを見つめていた。

「ソルトやったら、屋上やで」

「えっ・・・?」

 赤色のスタジャンの生徒にそう声をかけられた。

「今頃、上でのんびり日向ぼっこでもしてるはずや」

 彼女の言葉に、少女はまた会釈をし、部室を後にした。