一日目が終了し、深山は学校を後にした。出勤時よりも漕いでいる自転車のペダルが軽く感じられるのは、おそらく一日目のストレスから解放されたことの喜びからであろうと、そう感じていた。
学校からアパートまではさほど遠くはない。通り道に商店街を一つ挟む程度だった。だがやはりヤンキー校の近くだけあって、この商店街にもマジ女の生徒のみならず、他校のヤンキー生徒がたむろしており、喧嘩や怒号が絶えず続いていた。
彼は商店街を通り過ぎ、少し外れにある定食屋の前で自転車を停めた。
店の中に入ると、相変わらず客足は少なく、ほぼほぼ貸切状態であった。
「おっ、いらっしゃい」
「こんにちは」
「いつもの出来てるよ。ちょっと待ってて」
店主のみなみは深山の姿を確認すると、厨房奥へと姿を消した。
お食事処、亜祖美菜には大学に入学した当初から世話になっている。ここの料理は特別においしいというわけではないのだが、どこか懐かしく、そして温かみのある料理が出てくることが好きで、深山は何度も足を通わせていた。
「はい、お待ち。いつものしょうが焼きね」
パックに詰められたご飯としょうが焼きだけの弁当をいただき、深山はその代金を支払った。
「相変わらず、ここは人が少ないですね」
「うるせえよ、だったらお前がもっと友達に勧めてくれればいいだろ?」
「いやですよ。ここは僕の穴場スポットなんですから。逆に人が多くなると、来れなくなっちゃいます」
「店が潰れても知らねえぞ」とみなみに笑われたが、それほどこの場所は深山にとって居心地にいい場所であった。
「もうすぐだな。加藤先生の五回忌」
「そうっすね」
「今年もみんなで行くのか?」
「どうでしょう。あいつらもいろいろ忙しいですから」
「確かにな。そういや、今日から教育実習じゃなかった?」
「あっ、まあ・・・」
あまり考えようとしていなかったことを掘り起こされたような気がして、少し憂鬱な気持ちになっていた。
「ふふっ、その顔から察するにあまり手応えはなかった感じだな」
「まあ、マジ女ですからね・・・」
「まあでも、あそこはお前にぴったりだと思うけどな」
「みなみさんまでそんなこと言う」
「他に誰が言ったんだよ?」
「大学のゼミ担当の教授にも同じこと言われました。君にはマジ女が合ってるって」
「ははっ、やっぱりそうなんだろうな。まあでも、和樹ならやっていけると思うさ。あいつらの事、ちゃんと理解してやってくれ」
「みんな、みなみさんみたいな奴らだったらいいんすけどね」
そうしてしばらく、みなみとの世間話に花を咲かせてから、深山は店を後にした。