「失礼します・・・」
そっと職員室の戸を開け、中に入ると十数名ばかりの職員たちの視線を一斉に浴びた。その圧に多少怯みながら、近くの教員に担当者である教頭はどこにいるのか尋ねた。
「ああ、教頭でしたら、まだ校長室で会議中ですよ。奥のほうに座って待っててください」
少し不気味ににやつきながら話す男性教員に案内され、奥にある応接間へと連れてこられた。
応接間といっても、境目に戸があるわけでもなく、職員室内の一角に大きな仕切りを二つか三つほどとんとおいて区切られただけの空間であった。
実習初日であるため、これから三か月ほどお世話になる馬路須賀女学園の教師たちに少しでも悪い印象を与えないよう、普段以上にかしこまりながら、近くを通っていく教師たちに挨拶をして回っていた。
「お待たせしました。教頭の勝村です」
「あっ、お世話になります。城南大学から来た深山です」
緊張した面持ちでソファーに座っていると、ぬるっと現れたその男はとても気の弱そうな顔立ちで、とてもヤンキー校の教頭とは思えないような人物であったが、深山はその思いをぐっとこらえ、あわてて立ち上がって、一礼をした。
軽く互いの自己紹介を済ませた後、教頭の勝村は紙ファイルを開き、中の資料に目を通した。
「えっと、事前のオリエンテーションでも話は聞いていたかと思いますが、深山君には三年生の学級を担当してもらいます」
「三年生・・・」
「はい。まあおそらく多くはないと思いますが、受験勉強だったり就職活動を控える生徒さんが多いですから、彼女たちのサポートを極力でいいのでしてあげてください」
サポートといわれたが、ヤンキーの何をサポートすればいいのか。喧嘩を教える?それともうまく相手の機嫌を収める交渉術でも教えればいいのか。
なんて思ったが深山は、はいとだけ答え、小さく相槌を打った。