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第一章『現れた教育実習生』 14

何が起きているのか、状況を理解できないまま、深山は屋上まで連れてこられた。生徒の出入りが自由となっている屋上ではあったが、意外とひと気は少なく、そこにいたのはショートヘアーの女子高生一人だけであった。


「さくらさん、こんなとこにいたんすか!」

「結構探したんですよ!」


カミソリとゾンビ、二人に無理やり腕を引かれ、少女の前に連れてこられた深山は、こちら側に背を向けて、校庭を見下ろしている、彼女の姿を見つめていた。

少女はゆっくりとこちらを振り返り、深山の姿を認めると、明らかに不信感を抱いたまなざしで彼を睨みつけていた。宮脇咲良、彼女も深山が担当するクラスメートの一人で、なかなかクラスに顔を出さないことで有名であった。


「誰だ、こいつ」

「こいつっすよ、こないださくらさんのクラスに教育実習で来たってい先公は」

「もういいかな。僕だって暇じゃないんだ」


彼女たちの腕を振り払い、深山はその場を後にしようとすると、彼女に声をかけられた。


「待てよ、この学校に何の用だ」


宮脇の言葉に驚いた深山は、ゆっくりと彼女のほうを振り向いた。


「何の用って、教育実習だけど」

「それ以外にあるだろ」

「ないよ。ただ僕は教師になるためにここに学びに来ただけだ」

「なぜ嘘をつく」


彼女の言葉に心を揺らされかけたが、何とか平常心を保った深山は、その問いに答えぬまま、校舎へと戻っていった。