何が起きているのか、状況を理解できないまま、深山は屋上まで連れてこられた。生徒の出入りが自由となっている屋上ではあったが、意外とひと気は少なく、そこにいたのはショートヘアーの女子高生一人だけであった。
「さくらさん、こんなとこにいたんすか!」
「結構探したんですよ!」
カミソリとゾンビ、二人に無理やり腕を引かれ、少女の前に連れてこられた深山は、こちら側に背を向けて、校庭を見下ろしている、彼女の姿を見つめていた。
少女はゆっくりとこちらを振り返り、深山の姿を認めると、明らかに不信感を抱いたまなざしで彼を睨みつけていた。宮脇咲良、彼女も深山が担当するクラスメートの一人で、なかなかクラスに顔を出さないことで有名であった。
「誰だ、こいつ」
「こいつっすよ、こないださくらさんのクラスに教育実習で来たってい先公は」
「もういいかな。僕だって暇じゃないんだ」
彼女たちの腕を振り払い、深山はその場を後にしようとすると、彼女に声をかけられた。
「待てよ、この学校に何の用だ」
宮脇の言葉に驚いた深山は、ゆっくりと彼女のほうを振り向いた。
「何の用って、教育実習だけど」
「それ以外にあるだろ」
「ないよ。ただ僕は教師になるためにここに学びに来ただけだ」
「なぜ嘘をつく」
彼女の言葉に心を揺らされかけたが、何とか平常心を保った深山は、その問いに答えぬまま、校舎へと戻っていった。