「教授!ちょっと待ってください教授!」
大学三年生の夏休みを迎える前、彼は大学の掲示板に張り出された紙を見て、慌ててゼミ顧問である大門教授のもとへと向かった。
「おや、誰かと思ったら。深山君じゃないか。一体どうしたんだい?」
「どうしたもこうしたもありません、なんで僕の教育実習先が馬路須加女学園なんですか!」
「どうしてって、何か不服かい?」
「不服しかありませんよ。先生もご存じでしょう?馬路須加女学園といえば、都内でも屈指のヤンキー校です。そんなところで教育実習だなんて、とても勉強できるような環境だとは思えません!」
「まあまあ、落ち着かないか。あのような場所だからこそ、学べることは多い。それに君ならば、彼女たちのような、いわゆる《落ちこぼれ》の生徒の気持ちがよく分かるんじゃないかな?」
「それは・・・」
言葉を詰まらせた彼の肩に大門教授はそっと手を乗せ、優しいほほ笑みを見せた。
「とにかく、期待しているよ」
そう言って立ち去る教授の後ろ姿を見つめながら、彼はこの先のことに不安を抱えていた。