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第一章『現れた教育実習生』 09

『いいか、お前らは俺の大事な生徒だ。誰にも傷つけたりさせない』

『お前が・・・、未来を繋いでくれ・・・』


「はっ・・・!」

久々に見た夢だった。あの夢を見た後は、必ず玉のような汗を掻いている。

あのとき、あの人はどんな想いで自分と接してくれていたのだろう。

どうしてあの人は、自分達のような人間に・・・。

その想いを巡らせながら、彼は蛇口を回し、コップの中に水を溜めた。

勢いよく流れ出ていく水を見つめながら、彼は過去の事に想いを馳せていた。 



翌朝、出勤してまもなく大きな事件が起きた。

他校のヤンキーが殴り込みにやって来たのだ。

「ソルト!出てこい!今日こそ決着をつけてやる!」

職員室から窓の外を見ると、校庭にたくさんの他校の生徒が集まっていた。

追い出さなくていいのかと山村に尋ねると、見なかった振りをしろと言われた。

彼は戸惑いを抱えたまま、再び校庭に目を向けると、マジ女の女子生徒二人が彼女たちのもとへ向かっていっていた。

一人は以前見かけた、至って真面目そうな生徒と紫色のスタジャンを着た女子生徒であった。

「なんだよ、四天王に用はねえんだよ!」

「お前らの相手は私たちで十分だ」

「舐めたこと言ってんじゃねえぞ、ゴラ!」

そう言って紫のスタジャンの生徒に殴りかかった生徒の拳をするりと避け、彼女は相手の腹に手のひらを添えると、一転に力を集中させ、一気にそれを放った。

すると相手は驚くほど吹き飛び、地面に転がっていった。

「な、何をした!」

「気を放っただけだ。どうってことない」

今度は別の生徒がその生徒を殴ろうとすると、至って真面目そうな生徒がパシッとその拳を捕まえた。

「は、離せ・・・!」

彼女は相手の腕を引くと、腹に一発膝蹴りを喰らわせ、腕を捻り、相手を地面に叩きつけた。

「さ、さすがラッパッパ四天王のヨガとさくら・・・」

「ソルトさんはお前らのような雑魚を相手にするほど暇じゃない。分かったら、ここから立ち去れ」

紫スタジャンの生徒にそう言い放たれた他校の生徒たちは「覚えてろよ」と、まるで漫画でしか聞いたことのないような悪役の常套句を言い捨て、その場から逃げ出した。