光圀はその日の仕事を終えて、劇場から出たところだった。
「お父さん。」
関係者用の出入り口と劇場のお客様用出入り口は距離が近い為、光圀の目の前にいる女の子はお父さんを呼んでいることを光圀は理解した。
しかし、その子は光圀の方に歩いてきた。
「お父さん。お仕事お疲れ様。」
「莉乃?髪型変えた?」
その外見はよく見ると妻、莉乃に見える。
「あっ。そっか。この時代のお父さんとは初対面だった。」
「もしかして、未来の千尋?」
「穴井さんと間違えるといけないから。大塚千尋。2040年の未来から来た大塚光圀、莉乃夫婦の間に生まれた長女です。」
「それなら、俺のプロフィール言えるか?」
「大塚光圀。1990年8月18日生まれ。血液型は私と同じA型。・・・世間にはマネージャーだったお父さんとメンバーだったお母さんが両思いだって気がついてから、交際したって言っているけど。本当は、寂しがり屋のお父さんがお母さんや穴井さん達と一緒に生活して、その頃からの腐れ縁なんだよね?」
初対面のときに莉乃と見間違えかけた容姿に、プロフィールだけじゃなく、馴れ初め話をスラスラ喋れる記憶力。
見た目は母親似、中身が自分に似た人物を娘と考えるのが普通だが、疑問もある。
「千尋。俺達夫婦の馴れ初め話まで知っているから娘だと思いたいけど。どうやって、未来から来たんだ?タイムマシンがもうあるのか?」
「残念ながら、タイムマシンはまだないよ。似たようなタイムシューターってシステムなら私達が開発したけど。」
「どんなシステムなんだ?」
「まだテスト段階だから、あまり詳しく言えない。たぶん時間制限があって、そのうち、未来に帰ることになる。」
「そっか。よく頑張ったな。千尋。」
「お父さん。・・・ねぇ、お母さんのこと、好き?」
「当たり前だろ。じゃないとお前が生まれなかったろ?」
「そうだね。ごめん。もう時間みたい。」
「研究者あるあるで研究に夢中になりすぎて、ご飯欠かすなよ。未来の俺達に連絡しろよ。」
「お父さん。ありがとう。」
光圀も本当の家族に会う為に、今度こそ家に帰っていった。