六月十七日。
遂にこの日がやってきた。
「光圀。光圀。」
「今、トイレ中!移動開始してくれ。」
大事な日なのにこの家にはムードがなかった。
陣痛が来るのは突然のことがほとんどの為、仕方がない。
「大塚莉乃です。陣痛がきました。これから向かいます。・・・よろしくお願いします。」
「莉乃。お待たせ。千尋、まだ少し出てくるのを待っていろよ。」
二人は病院に向かって出発した。
二人は事故なく無事に病院にたどり着き、いよいよ千尋を出産するときとなった。
「莉乃。頑張ってくれ。千尋、もう大丈夫だよ。パパとママに顔を見せてくれ。」
「大塚さん。力んでください。」
「ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。」
数分後、病院内に産声が響いた。
「千尋。ママだよ。これからよろしくね。」
「千尋。生まれてきてくれてありがとう。莉乃。本当にありがとう。」
光圀の目には涙が光っていた。
光圀は莉乃の両親、尾崎さんに連絡を入れ、最後に彼女に連絡を入れた。
「穴井。元気にやっているか?」
「どうしました?大塚さん。」
「長女が産まれたから連絡を入れているんだ。ありがとう。」
「私は何もしていませんよ。」
「そんなことはないさ。」
「大塚さんがさっしーのことを思い続けたからですよ。」
「こっちに帰ることがあったらうちの娘の顔見に来てくれよ。」
「考えておきます。それじゃ」
「あぁ。」
光圀は家族の待つ病室へと戻っていった。
その顔は柔らかい笑顔だった。