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六月五日。リビングに光圀が本を置いたのを見て、莉乃は目を丸くした。

「光圀。この本って?」

「アルバム。今日はベビーデーだしな。」

「ベビーデー?」

「母の日があって父の日があるだろう。その間の6月最初の日曜日のことをベビーデーっていうんだよ。」

「相変わらずすごい知識ね。」

光圀は少し口角を上げ、アルバムを開いた。

「ほい。俺の誕生のときの写真だ。」

光圀の母親と生まれて間もない赤ん坊が写った写真を莉乃に見せた。

光圀の母親は光圀誕生に涙を浮かべていた。

さらに紙を貼り付け、『生まれました。母ちゃん、こんにちは』の文字が書かれていた。

日付けが変わり、眠っている光圀が写っていた。

後ろには今度は父親がいた。

『父ちゃん。これからよろしく!』

「はい。」

「へ?」

光圀の目の前にハンカチが出てきた。

光圀はアルバムを見て、涙を浮かべていたのだ。

「ありがとう。」

二人は、光圀のアルバムを見ながら、思い出を共有した。

「早く、千尋に会いたいな。」

「もうすぐ産まれるよ。」

予定日まで後十日になった。

二人は千尋の誕生を心待ちにしていた。