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光圀はゆっくりと自分の自宅の扉を開いた。

「光圀。何があったの?」

「莉乃。俺は浮気をした。だから、俺と別れて、」

「嫌。」

「俺は、お前達を裏切ったんだぞ。」

「奈子とみくりんに一服盛られたって聞いた。光圀は抵抗していたとも聞いた。だから、私達から離れないで。」

「俺は」

「光圀から別の女に迫ったならともかく、向こうからの、抵抗したなら良いのよ。」

「いつもいつも、莉乃には敵わないな。」

「おかえりなさい。私達のパパ、光圀。」

「只今。莉乃、千尋。」

嵐が起こるかと思った大塚の家だったが、莉乃の懐の深さに救われた光圀だった。

光圀と莉乃は今、福岡市内をドライブしていた。

目的地は昨日、リニューアルした福岡マリンワールド(水族館)である。

「ふー。着いた。」

「ねぇ、駐車したときにもらったのアイスの割引券だって。」

「そこに店があるから、食べる?」

「光圀は食べないの?」

「食べるに決まっているだろ。」

二人であまおうとバニラのソフトクリームを食べる。

光圀は、莉乃と千尋、更に増えるであろう家族を思いながら、幸せを噛み締めた。

「嘘?」

「どうした?」

「いつもはほとんど動かない千尋が動いているの。」

「元気に産まれてきてくれよ。千尋。」

帰宅したとき、二人の思い出がまた増え、寝室にアザラシポーズでスタッフに撮ってもらった記念写真と抱き合っているペンギンのぬいぐるみが置かれたのだった。