できちゃった婚であるが故に優一と莉乃は結婚式をしなかった。
そして、優一の両親が離婚していることも理由の一つである。
優一の両親に莉乃の紹介をするのが今回の会食の目的である。
「親父。ちゃんとしろよ。」
「お前の彼女の紹介くらい家ですれば良いだろう。」
「そういうわけにはいかないよ。」
「あ、お兄ちゃん。・・・お父さん。」
美音がまず出迎えた。
「あいつに似たもんだな。」
美音をチラッと見て、父は歩みを進める。
「早いのね。まだ予定時間の
「ふん。」
「親父、お袋。喧嘩するなよ。これから会食なんだし。」
「肝心のお前の彼女がいなかったら意味ないだろう。優一」
「こんな呑んだくれのトラックドライバーさんと一緒なんて嫌よ。」
「ごめん。優一。お待たせ。」
「あぁ。莉乃。ここまでどうやって来たんだ?」
「タクシーだけど。」
「良かった。」
優一は莉乃のマンションに移り住む予定だ。
手を叩き、開始の合図を優一はした。
「親父、お袋、美音。俺が交際していた会社の同僚で先輩の指原莉乃さんです。実は莉乃のお腹には俺の子供がいて、責任を取って結婚をすることになった。」
「お兄ちゃん。義姉さん。おめでとう。」
美音がお祝いの言葉を言うが、父と母の表情は微妙だった。
「指原莉乃です。不束者ですがよろしくお願いします。」
「まぁ、優一が選んだ女性だ。俺達みたいになるなよ。」
父に言わせれば離婚するような結婚生活を送るなということらしい。
「お酒の飲み過ぎと奥さんへの暴力は駄目よ。」
離婚の原因そのものを母は言った。
「親父、お袋。美音とも話したんだけど、そろそろ仲直りしたら?もう一年もしたら孫が生まれるんだし。」
「ちゃんと家庭裁判所で話し合って離婚したんだから、今更よ。」
「女なんてもう面倒だ。」
「わかったよ。とりあえず今日くらいは家族に戻って、食事しよう。」
「お父さん。後でビールお酌してあげる。」
気まずい雰囲気もあったが会食は終わった。