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珍しいことが劇場裏で行った。

芽瑠の前に餃子を持った光圀が現れたからだ。

光圀は回転寿司で二十枚は軽く平らげる男なのに、何故このような行動を取るのか?

「悪い。田島、餃子食べてくれないか?」

「え?大塚さん。何かの病気ですか?」

「家の家内、莉乃は妊娠中でつわりだから、ニンニクの匂いだけでも辛いと思ってな。」

「分かりました。」

光圀は妊娠中且つつわり中の莉乃の為に、自身の食生活(匂いのきついものを食べない)、その他生活習慣(帰る前に車内でファブリーズをする)等、気を使った。

「今日、定期健診だっけ?」

「うん。どっちが良い?」

「女の子かな?一姫二太郎っていうくらいだし。」

「名前も決まっているもんね。」

「気を付けてくれよ。もう、莉乃だけの身体じゃないんだから。」

「分かっている。ねぇ、キスして。」

「チュッ。・・・それじゃ、行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」

劇場で、光圀がドアにぶつかっていた。

「大塚さん。大丈夫?」

「あぁ、本村か。大丈夫だよ。」

「さっしーの、奥さんのこと考えていたんですよね?」

「まぁな。今日、エコー検査でどっちか判るのと、色々心配でな。」

「女の子なら千尋って名前にするんですよね?」

「あれ?言ったっけ?」

「二人の長女はちーちゃんしかないでしょう。」

「穴井が名付親なんだよ。」

「私達にも赤ちゃん抱っこさせてくださいね。」

「まだ早いよ。」

そんな中、電話がかかってきた。

相手はもちろん莉乃だ。

「はい。」

「光圀。どっちだったと思う?」

「女の子?」

「うん。」

「そっか。俺は産めないけど、できるだけサポートはするから。」

「お仕事頑張ってね。劇場支配人さん。」

「分かっているよ。気を付けて帰るんだぞ。」

会話を終えると拍手が起こった。

「大塚さん。良かったですね。」

「お前達、もしかして俺達の会話聞いていたんじゃないだろうな?」

「すごいニヤケてましたよ。」

「今でもさっしーに頭が上がらないんですね。」

「良いだろ。ちゃんと役所に届けを出した夫婦なんだから。」

回りに祝福してもらえる光圀と莉乃だった。