珍しいことが劇場裏で行った。
芽瑠の前に餃子を持った光圀が現れたからだ。
光圀は回転寿司で二十枚は軽く平らげる男なのに、何故このような行動を取るのか?
「悪い。田島、餃子食べてくれないか?」
「え?大塚さん。何かの病気ですか?」
「家の家内、莉乃は妊娠中でつわりだから、ニンニクの匂いだけでも辛いと思ってな。」
「分かりました。」
光圀は妊娠中且つつわり中の莉乃の為に、自身の食生活(匂いのきついものを食べない)、その他生活習慣(帰る前に車内でファブリーズをする)等、気を使った。
〇
「今日、定期健診だっけ?」
「うん。どっちが良い?」
「女の子かな?一姫二太郎っていうくらいだし。」
「名前も決まっているもんね。」
「気を付けてくれよ。もう、莉乃だけの身体じゃないんだから。」
「分かっている。ねぇ、キスして。」
「チュッ。・・・それじゃ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
〇
劇場で、光圀がドアにぶつかっていた。
「大塚さん。大丈夫?」
「あぁ、本村か。大丈夫だよ。」
「さっしーの、奥さんのこと考えていたんですよね?」
「まぁな。今日、エコー検査でどっちか判るのと、色々心配でな。」
「女の子なら千尋って名前にするんですよね?」
「あれ?言ったっけ?」
「二人の長女はちーちゃんしかないでしょう。」
「穴井が名付親なんだよ。」
「私達にも赤ちゃん抱っこさせてくださいね。」
「まだ早いよ。」
そんな中、電話がかかってきた。
相手はもちろん莉乃だ。
「はい。」
「光圀。どっちだったと思う?」
「女の子?」
「うん。」
「そっか。俺は産めないけど、できるだけサポートはするから。」
「お仕事頑張ってね。劇場支配人さん。」
「分かっているよ。気を付けて帰るんだぞ。」
会話を終えると拍手が起こった。
「大塚さん。良かったですね。」
「お前達、もしかして俺達の会話聞いていたんじゃないだろうな?」
「すごいニヤケてましたよ。」
「今でもさっしーに頭が上がらないんですね。」
「良いだろ。ちゃんと役所に届けを出した夫婦なんだから。」
回りに祝福してもらえる光圀と莉乃だった。