白石はようやく駅に辿り着いた。吸い込まれるように切符売り場の自販機の前で立ち止まった。
(定期を使わないのか。・・・・・・寄り道するつもりか)
彼女は壁に掲げられた大きな路線図を見上げた。確かな目的地があるようには見えない。右に左に何度か視線を動かしている。
そんなふうにしてから、彼女は券売機で切符を買った。尾行する二人も、わざと別の列に並んで同じ切符を買う。真も二人に続こうとした時、中学生らしき一団が流入し、一気に列が渋滞した。
(しまった。これでは置いていかれる)
真ははやる気持ちを抑えながら、先を行く彼女らの姿を目で追った。少し先に三人の後ろ姿を発見した。三人は順番に改札口に吸い込まれていった。
券売機が空くのを我慢して待つ真の心だけが焦る。
(まだ行くなよ)
真は切符を手にすると改札に駆け込んだ。どのホームかと辺りを見回す。一番手前のホームは乗客が多かった。この中に紛れているとかなり厄介だ。
それでも真は諦めず、白石の姿を探す。そうこうしてるうちに、ベルが鳴り響き、列車が入ってきた。
(くそっ!)
列車が壁となって、もう誰の姿も見えなくした。一段と焦りが募る。
真は跨線橋を走った。しかしホームに届く直前に発車のベルが鳴り出した。慌てて階段を降りると確認の取れないまま列車に乗り込むしか方法はない。
(間に合え!)
真の目の前で無情にも扉が閉じた。列車が動き出す。
(間に合わなかった・・・・・・・)
列車が去ってしまうと、ホームには静寂だけが残された。真は肩で大きく息をする。
疲れはまるで感じなかった。ただ白石を想う気持ちで一杯だった。
(彼女の身に何も起きなければいいが)
新しい視界が開けていた。奥のホームが見渡せた。向こうはローカル線で乗客もまばらだった。
(んっ?)
そこに白石の姿があった。こちらに背を向けて立っている。真はほっと胸を撫で下ろすと階段へと向かった。
(何とか追いつけたか)
しかし、全ては偶然がもたらした結果だった。ちっとも彼女を守っていることにはならない。真は自分の無力さを感じずにはいられなかった。
列車が来るまでには少し時間がある。同じホームに降り立つのは目立ち過ぎる。跨線橋の上で真は列車が来るのをしばらく待った。
(ん?)
白石から少し離れた場所に二人の女子もいる。
(あいつら。まだいるのか)
列車がやって来る頃には、いつの間にかホームは混雑していた。そんな大勢の人々に紛れるように真と列車に乗り込んだ。
白石は出入口付近に立ち、ずっと窓の外を見ている。少し離れた座席に二人の追跡者が腰を下ろしていた。
(しかし、白石はどこまで行くつもりなんだ)
この路線は海沿いを走って隣町までつながっている。真の買った短距離切符では数駅までしか乗れない。
白石は二つ目の小さな駅で下車した。