日が流れて行き、いよいよ文化祭が明後日に迫っていた。
この日、真は白石と最後の練習をすることになっていた。真は鳥居に電話を掛け、リハーサルに立ち合ってもらえないかと頼んだ。第三者からの客観的な意見を聞いてみたかったからである。
鳥居も最初は白石と関わり合いたくないと断ったが、お前の頼みなら仕方ない、と最後は渋々了承してくれた。
体育館には朝から出場者が続々と訪れている。本番の出演順にステージでの演奏が認められていた。そんな中、もギターケースを抱え、校門にやって来た。
白石は木陰で真を待っていた。真の顔を認めると白石は弾かれたように駆け寄った。
「おはよう」
夏の日差しを一杯に受け、彼女の顔は輝いていた。
(こうやって見ると、確かに美人だよな。高校生としては。やや大人びた顔立ちに綺麗な髪も似合ってるし。やっぱり、テレビの中の存在になってしまうのかな)
真はそんなことを考えながら挨拶を返した。その後、二人は肩を並べ、文化祭の立て看板の横をすり抜けて行った。
体育館ではすでに演奏が始まっていた。流れてくる曲の完成度の高さに真は自然と身が引き締まった。
出番を待つ間、各組は自由に練習してもよいことになっている。真は校庭の片隅で、白石と音合わせをすることにした。
話したいことが山ほどある筈なのに白石の前ではまるで言葉が出てこなかった。
真は横目で隣を歩く彼女を見た。彼女の表情からは迷いは見られなかった。芸能界に進むことを決心したに違いない。後は真っ直ぐ進むだけである。何の躊躇もないはずだ。
(それに比べて俺は・・・・・・)
白石との別れが着実に近づいている。そんな不安な気持ちばかりが身体を襲う。何とかして彼女とは別れたくない。抑えきれない心の叫びは彼女まで届いているのだろうか。
こんな気持ちで果たして呼吸を合わせることができるのだろうか。
真は自嘲気味に小さく笑った。