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「兄弟はいないの?」

 真は大丈夫だと思い踏み込んだことを聞いてみた。

「姉ならいるわ。双子の姉が」

「双子なの?」

 真は質問の答えてくれたことにも、その内容にも驚いた。

 今まで見ることのなかった白石の表情に学校の白石と目の前の白石はひょっとすると別人ではないのだろうかと真は思ってしまった。

(どこかで姉妹が入れ替わっているとか、いや、あり得ないな)

「双子ってことは、やっぱり顔も似てるの?」

「そう、瓜二つ。あなたには見分けがつかないかも」

(やっぱり! 彼女が妹なら、学校にいるのは姉の方だ)

「君は妹?」

 あり得ないと思いながらも、真は質問を続けた。

「そうよ」

「じゃ、お姉さんはどこの学校に通っているの?」

「今は行ってないんだ」

 白石は少し答えにくそうに言った。それは高校に進学しなかったということか、それとも中退したという意味なのか真にわからないが、いずれにせよ、それ以上突っ込んで聞け雰囲気ではなかった。


 二人はしばらく沈黙した。寄せては返す波の音がこの世界を支配していた。それは途切れることのない一定のリズムでとても心地良かった。

 真は白石の歌声のことを考えた。白石の澄んだ歌声をクラスメートだけで聞くのは勿体ない。学校中に響かせたいと。とりわけ、彼女を無視する連中に届けるべきなのだと。彼女の隠れた一面を知れば、きっと誤解を解くだろうし、敵意はなくなるだろう。

(何か方法はないだろうか)

 その時、真がひらめいた。毎年、秋に開かれる学祭。そこでは生徒によるバンドコンサートが開かれる。

 真は思わず立ち上がっていた。

「白石さん!」

 彼女に強い視線を投げかけた。

「一緒に学祭のコンサートに出場しないか?」

「コンサート?」

「そう!」

「あなたと歌うの?」

 白石は少し躊躇いがちに尋ねた。

「いや、俺は無理。音痴だから」

「でも、一緒に、って?」

「俺は楽器をやるよ。そうだな、ギターの演奏だ」

「弾けるの?」

 なかなか痛いところを突かれた。

「去年、親父からギターを譲ってもらったんだけど、全然。でも、これを機に弾けるようになればいいんだろ?」

 白石はじっと真を見つめていた。少しも目を逸らさなかった。彼女は思いがけない提案に心を動かされたようだった。しかし、すぐに表情を曇らせた。

「けど、みんなの前で演奏するんでしょ。大丈夫なの?」

「大丈夫さ。君が歌ってくれるなら俺も頑張って弾けるようにする」

「・・・・・・分かったわ、一緒に出ましょう」

 白石は力強く言ってくれた。