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兒玉遥 「風俗嬢」3

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 シャワーを浴びながら呆気なく射精をしてしまった俺は情けなさを覚えたが、彼女は何も気にしていないようだった。そもそも慣れているのだ。童貞であることを告白してしまったし、つまらない見栄を張るのは止めようと思った。

 身体を洗い終えると、今度はマットの上に寝かせられた。アダルトビデオで見たことのあるマットだった。


「はーい。じゃあ今度はローションを塗るね。ちょっと冷たいけど、我慢してね」


 舌足らずな声だった。間違いない。高校時代の彼女も、舌足らずな声をしていてよく言葉を噛んでいた。

 片想いをしていた女性からローションを塗られる。悲しくとも、下半身は反応を見せていた。なぜなら彼女が胸をさらけ出し、身体ごとローションを塗りつけてきたからだ。


 ずっと見たかった彼女の裸体がすぐ目の前にある。何度彼女を想って自慰をしたのだろう。何度裸を想像したことだろう。想像の世界だったのが、今目の前にある。

 俺の手は自然と彼女の胸に伸びていた。


「あん。いきなり触るなんて。おっぱい、触ってみたかった?」


 初めて触れた女性の胸。柔らかくてスベスベしていた。俺はコクコクと頷いた。


「もっと触っていいよ」


 その言葉を受けて、俺は両手で彼女の胸を揉んだ。


「さっき出したばかりなのに、もうビンビンだね」


 ペニスは天を突き刺すように勃起していた。まだ女性器の中に入ったことのないペニスに薄いゴムが付けられた。


「挿れていい?」


 夢にまで見た光景だった。女性器の中へペニスが飲み込まれていく。

 彼女の陰毛と俺の陰毛が重なった。それはすなわち、一つに繋がったという証拠だった。


「入っちゃった。童貞卒業だね」


 ペニスが四方八方からギュウギュウと包み込まれるようだった。


「動くね」


 重なり合っていた陰毛が離れていく。その先に見えたのは、ゴムに包まれたペニスだった。

 もう少しで抜けそうというところで、彼女の腰がストンと落ちた。また陰毛が重なり合う。


「うう……」


「痛かった?」


「ち、違います。気持ちよかっただけです」


「そう。じゃあどんどんいくね」


 もちろん気持ちよかった。憧れの人と繋がっている。高校時代、何度夢に見た光景だろう。何度この光景を妄想しては、自慰に(ふけ)ったことだろう。

 しかし――なぜだか俺は悲しくなった。もっと彼女とは違う場面でこうしていたかった。どうしてこんな場所でこんなことをしているのだろうと思うと、涙が出そうになった。


 ツーンとする鼻の奥で、射精感が込み上げてきた。こんな時にでも身体は正直だった。情けなくて、俺はそれを隠すように手を伸ばして彼女の胸を揉んだ。


「あん。気持ちいいよ」


 嘘つけ。お前はもっとテクニックのある男たちとしているだろ。こんな年甲斐もなくいつまでも童貞の男なんて、気持ちいいはずがないだろ。

 挿入から何分経っただろうか。五分? それとも十分? 時間の感覚は分からなかったが、きっと他の男たちから比べると格段に早いだろう。

 ペニスからスペルマが飛び出し、ゴムの中に注がれる。ドクドクと跳ねるペニス。もう射精してしまったのかいわんばかりの彼女の顔。


 こんなことなら行かなければよかった。

 金で念願の彼女とセックスが出来た。しかしそれ以上に失ったものはあまりにも大きかった。