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兒玉遥 「風俗嬢」2

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 兒玉遥――俺の高校時代の同級生であり、片想いを寄せていた女である。ショートカットの黒髪をセンター分けにしており、誰とでも仲良くなる活発な少女だった。

 勉強ばかりに打ち込んでいて、根暗だった俺にも優しく接し続けてくれていた彼女。それがどうすれば風俗嬢になったのか。

 確か保育氏を目指して専門学校へ進学したはずである。想いを伝えられずに俺の恋は終わった。てっきり夢だった保育士になっていたと思ったのに。


 しかし、まだ彼女が風俗嬢になった確信はない。あの写真に写っていたのは、もしかしたら兒玉遥によく似た女なのかもしれないのだ。それを確かめに一週間後の今日、再びあの店へ訪れようとしている。

 ドキドキとしていた。見間違いであって欲しいと願う反面、もし彼女だとしたら金を払えばセックスが出来るのだ。

 無駄に貯金をしていたから、通い詰めることだって出来るし、彼女を救い出せるかもしれない――。


 そう。わざわざ風俗嬢になったのには金銭的な問題があるとしか考えられなかった。借金でも背負ったのだろうか。人の良い彼女のことだ。きっと連帯保証人にでもさせられたのだろう。

 もし俺が彼女を救うことが出来たのなら――彼女は結婚をしてくれるだろうか。冴えないが真面目な仕事人間である。つまらない男かもしれないが、安定した収入はある。俺にある唯一の武器がそれだった。


「しゃっせー」


 店の中に入ると、やる気のない店員に出迎えられた。一週間前の若い男はいないようだ。


「この子を指名したいのですが」


 兒玉遥と思しき写真を指差した。


「はい。“はるっぴ”さんはただ今の時間空いていますね。当店は前払い制になっています」


 マニュアル通りの対応をする男に料金を渡すと、部屋に案内された。


「では、しばしお待ちください。お楽しみにどぞー」


 ダラダラとした間延びのある声だったが、今はそんなことが気にならないほど高鳴っていた。彼女の源氏名、それは高校時代のあだ名だった――。

 と、ノックの音が聞こえた。開いた扉から嬢が入ってきた。彼女の顔を見た瞬間、俺の予感は的中してしまったことを知った。


「はるっぴです。今日は指名してくれてありがとね。いっぱい楽しもうね」


 そう言いながら身体をすり寄せる嬢はやはり兒玉遥だった――。


「緊張してる?」


 彼女は俺のことに気が付いていないようだ。それはそうか。俺が一方的に片想いを寄せていただけなのだから。

 日陰にひっそりと咲く花のような自分なんて彼女は覚えているはずがないのだ。それこそおこがましかった。

 だから俺は開き直ることにした。開き直って、彼女を抱こう。せめて初めてを彼女に捧げることが出来たのなら――風俗嬢になってしまったかもしれないが、それでも彼女は当時の面影を残していた。


「……そうですね。あの、お恥ずかしながらこういうお店は初めてで」


「そうなんだぁ」


「あと、実はセックスもまだでして……」


「へぇ。こんなカッコいいのに。じゃあ私が最初の相手だね。ふふっ、光栄だなぁ。ね、お風呂に入ろうよ」


 俺は洋服を脱ぐと、彼女に先導され浴室へと向かった。


「はーい。今から洗うね。熱くない?」


「大丈夫です」


 シャワーをかけられると、ボディソープを塗りたくられた。女性に肌を触られるだけでペニスが反応を見せ始めた。


「ふふっ、女の子とお風呂に入るの初めて?」


「はい、そうです」


 彼女の手がペニスへと伸びた。シュッシュッと擦られると、声が漏れた。


「まずは一発出しちゃおっか」


 女性にペニスを触られるのはもちろん初めてだった。彼女の手は柔らかくてしっとりとしていた。それが竿を握り、睾丸を優しく揉む。

 俺は呆気なく射精してしまった。