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生田絵梨花 「催眠術師」2

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 電話から一週間が経った頃だった。俺の家に小包が届けられた。宛名を見るが見覚えの無い会社からだった。

 爆弾か。こんな資産も無い男に爆弾を届けても仕方が無いのに。俺は自嘲しながら小包を開けてみると、A4サイズの紙と梱包されたDVDが一枚入っていた。


『お申し込みありがとうございます。これであなたも夢の催眠術師です』


 紙を見て、俺はそういえば電話をしたなと思い出した。多忙で忘れていたのだ。

 小包にはそれだけしか入っていなかった。怪しいが、俺はDVDを見ることにした。


 画面に映る男はマスクを被り、催眠術の説明をした。金髪の外人の女を呼ぶと、女に対して催眠術を仕掛け始めた。

 すると女はコテンと眠り始めた。ビールを飲みながら俺は思わず声を上げて笑った。金を払うからこんな演技をしてくれと頼んだに違いない。

 男が女を起こすと、女は虚ろな目をしていた。男が犬の真似をしてみろと言うと、女は四つん這いになってワンワンと鳴いた。


 安い演出だ――最後まで見てはみたが、俺には到底信用出来るものではなかった。


 DVDで散々笑った俺は床についた。寝ていると夢を見た。それは催眠術を施し、女にフェラチオをさせている場面だった。

 女は嬉しそうに俺のペニスを舐めている。唯一目だけは光が無かった。底なし沼のような目だった。


 目覚まし時計の音で俺は夢から覚めた。普段は夢を見ないタイプである。

 そうか。もしも催眠術が使えたのなら、女にあんなことを出来るのか。どうせダメ元である。俺はもう一度DVDを見て勉強することにした。




 疑いがないわけではなかった。むしろ疑いの方が強かった。しかし俺は粘り強く取り組んだ。どうせ仕事以外寝るか酒を飲んでいる人間だ。仕事以外の時間はあった。

 最初はベランダに止まるカラスにやってみたが、成功する前にさっさと逃げてしまった。犬猫でも同様で、やはり人間でなくてはならなかった。

 そのため、主に職場でやることにした。暇を見つけては会社の人間たちにしてみたが、反応は薄いどころか、嘲笑される日々だった。


 普段の俺だったらとっくに止めていたことだろう。しかし俺は諦めなかった。煩悩が強かったのもあるが、俺の中でこれは成功すると思い始めていたからだ。

 理由なんてなかった。ただ、俺の勘を信じただけだった。


 


 後片付けを終えると、俺はある場所で待機していた。この場所はカメラの死角になることはずっと前に調べをつけていた。

 そこで彼女を待つ。ADを始めた頃、俺は彼女を見た瞬間心を奪われた。まだ二十歳前の小娘である。子供には興味が無いと思っていたが、彼女は別格だった。

 真っ黒な髪。意志の強そうな目。頭も切れる上、ピアノが上手ときた。俺は昔から楽器の弾ける女に弱かった。いかにも女らしい女。それこそが生田絵梨花だった――。