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樋渡結依 「ラジオの代償」2

 何をされるのだろう。ずっとそう思いながら身構えていたが、あんにんさんは楽しそうにお喋りをしているだけで、何もしてこなかった。

 緊張で喉が渇いていた私は、紅茶を飲みながら話に付き合った。と、ふいに尿意を催した。


「あの、トイレに行ってもいいですか」


「トイレに行きたいの?」


「はい」と私は答えた。さすがにトイレぐらい行かせてくれるだろうと思いながら。


「じゃあ、ここにして。パンツを穿いたまま」


 クローゼットから出てきたのは、なぜかバケツだった。私は意味が分からず、戸惑った。


「え? あの、あんにんさん本気、ですか」


 さすがに冗談だろうと思った。いくらあんにんさんでもそんなことをさせないだろう。

 けれど、あんにんさんの目は本気にしか見えなかった。


「本気よ。最近ね、ネットで見たのよ。女の子におしっこさせてる動画。でね、私もひーわたんにしてもらいたいなぁって思って」


 私は開いた口が塞がらなかった。どんな動画を見たのか知らないが、どう考えても普通ではない。


「いえ、その……」


「おしっこ。したいんでしょ? でなきゃ漏れちゃうわよ。言っておくけど、私の家で漏らしたなんていったら……」


 ゾクッとした。恐怖心から、尿がチョロっと出てしまった。


「このまま我慢させるのも悪くないかしらね。縛り付けて下にバケツでも置いて」


 おぞましい笑みを浮かべるあんにんさん。私は今にも吐き出してしまいそうだった。


「けど、我慢させて膀胱炎になったら可哀想。こんな可愛い子なのに」


 ヘッドロックのような体勢で頭を撫でられた。私の頭の中はめまぐるしく回転をする。

 このまま受け入れるか否か。けれども、選択肢なんてないに等しかった。結局、どちらにせよ私はあんにんさんの前でおしっこをする運命なのだ。


「します。ここでしますから」


「させてください。でしょ」


 膀胱炎になるまで我慢した結果、漏らすなんて恥辱を受け入れたくなかった。


「はい。ここでおしっこさせてください」


「パンツを穿いたまましなさい」


 差し出されたバケツを見て、涙が出そうになった。何が悲しくてバケツの中にしなくてはならないのだ。

 人としてのプライドまで打ち砕こうとしている。けれども、私に拒否権はなかった。


「あら。可愛いパンツね。でもちょっと漏らしちゃったのかしら」


 クスクスと笑うあんにんさんに、私は唇をキュッと噛んだ。公演後の着替え中あんにんさんが穿いているのを見て、私もこの下着を選んだ。私にとってあんにんさんは憧れの存在であったのに……。

 スカートを捲くり、バケツを足の間に置く。尿意はあるはずなのに、一向に出てこない。

腹部に力を入れると、出そうでなかなか出なかった。


「出ない? じゃあ私が刺激しちゃおっかな」


「いえ、出ます 。出しますから。くっ……」


 私は渾身の力を込めると、尿はチョロっと出てきた。それが合図のように、一気に尿が迸った。


「ひーわたんったらもう高校生なのにお漏らししちゃって。どんな気分かしらね」


 そうしろと命じたはずなのに。私は恥辱を受けながら、おしっこを出し続ける。といっても、一度防波堤が崩れたために勝手に溢れ出てくるのだ。


「バケツから飛び散ったのは舐めて綺麗にしてもらおうから」


 下着が邪魔をして、おしっこはあちらこちらに飛び散っていた。ただでさえ、人前でパンツを穿いたままおしっこをさせられ、しまいに自分の舌で舐め取らされるのか。

 ツンと漂うアンモニア臭。私はその臭いから背くように、目尻に溜まった涙が流れ落ちないように上を向いた。


 バケツに水が溜まる音が聞こえた。