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~現在~

「ああ…これは…こんなものもとっておいてくれたのか…」

俊太郎は経年で古ぼけた小さなクマのぬいぐるみを手に取った。


~20数年前~

馬路須加女学園。

「まさか、さくらとおたべさんが彼氏持ちになるなんてなぁ…ありえないだろ」

マジックがぼやいた。

「羨ましいのか?」

ヨガが瞑想しながら言う。

「う、羨ましくなんかねーよ!」

「またまた、本当は羨ましいんでしょ?マジックさん」

ウオノメが茶化す。

「ウオノメ!てめぇ、ぶっ殺す!」


~屋上~

さくらがフェンス越しに景色をぼんやり眺めている。

  「さくら!」

おたべの声に振り向く。

「今度の日曜、暇やろ?」

「え?」

「暇やな?」

「ええ…まあ。どうしたんですか?」

「デートやデート」

「デート…?私とおたべさんで?ですか?」

「あほか!なんでうちとさくらがデートせないかんねん。どうせ、あんたのことや、小栗とデートとかまだなんやろ?」

「そ、そんな事は…」

「まだやろ?マジ女のテッペンに魔素羅尾の総番はお互いウブやからなぁ…」

「そういう、おたべさんはどうなんですか…」

「うちらか?デートしまくりや!羨ましいやろ?」

「……」

「そんなんで、うちと雄ちゃんであんたらにきっかけつくったる。ダブルデートや」

「ダブルデート…?」

「二人じゃ恥ずかしいやろ?だからな、うちと雄ちゃん、さくらと俊太郎で4人でデートするんや。いい考えやろ?今度の日曜や。9時にマジ女の裏門集合。ええな?」

「ちょ、ちょっと待って下さい、おたべさん」

「ええな、伝えたで。おめかししてくるんやでー。ほなな」

「ちょっと、おたべさん!」

「うちはこれから、雄ちゃんとデートや。ほなな」

おたべはテンション高めでほぼ一方的に捲し立てると、去っていった。

「はぁ…」