小栗新支社長の就任歓迎会は盛大に行われた。
S支社は他の支社に比べると、まだまだ規模は小さく、これからの支社だ。
だが、前任と北村専務が優秀な傑物だった為、社員の教育はよく行き届いていた。
盛大のうちに、歓迎会は終了し、翌日は休日とした。
「小栗社長、実はいい店があるんですが、2次会どうです?」
北村が上機嫌で誘ってくる。
「北村さん、いい店って、コレ?」
大山が小指を立てる。
「いかがわしい店じゃないよ?大山君。前任と私が贔屓にしていた、クラブでしてね?ママもホステスもいいオンナ揃いなんですがね」
「しかし、北村さん…高いんじゃ…?」
「いえいえ、東京なんかに比べたら、安いもんです。きっと気に入ると思いますよ」
「小栗、いや社長。北村専務もこう言ってるし、20年働きづめだったんだ、たまには息抜きした方がいいと思うが?なあ、中川」
「そうそう。息抜きは大事だな」
「決まりですね」
北村はフットワークが軽い。
全て用意できているようだった。
S市の繁華街から少し離れた所に、そこはあった…
【クラブ さしこ】
小栗俊太郎の人生の歯車が再び動き出す…運命の出逢いがあることを今は知るよしもない。