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翌日、おたべは、俊太郎に作る料理の買い出しをして、自宅を訪ねた。

インターホンを押しても、返事はないが、鍵は開いている。

「俊ちゃん、入るよ?鍵開いてて、不用心やなぁ…」

おたべは話しながら、奥に入って行く。

「うわ!お酒臭いわあ…」

おたべがリビングの戸を開ける。

「俊ちゃん、御飯…!!」

そういいかけた、おたべが部屋に目を向けると、俊太郎が今まさに、首を吊ろうとしているところだった。

「何してんのやっ!!」

おたべが、俊太郎に飛びかかって、阻止した。

「死なせろ!死なせてくれよ!何で邪魔するんだ!」

なおもロープに首を括ろうとする俊太郎。

「バカぁっ!!」

俊太郎を張り倒す、おたべ。

「死にたい…咲良さんに会いたいよ…咲良さん…」

おたべは一瞬、憐れみの表情を見せたが、憤怒の表情に変わると、俊太郎を怒鳴り付ける。

「あんたが、今死んでも咲良は、会ってくれへんよっ!!会ってくれるわけないっ!!咲良があんたに、ようきたな、まっとったよって、言ってくれるとでも思とんのか?」

泣き崩れる俊太郎。

「咲良はマジ女のテッペンだった女や!そんな弱いあんたに会ってくれるわけないやろ!なあ、俊ちゃん!しっかりしてんか。咲良に会いたいんやったら、咲良が会ってくれるように、咲良の分まで、生きないかんの違うか?」

「………」

「なあ、俊ちゃん…咲良が亡くなって、辛いんは、俊ちゃんだけやないんやで?御両親だって、家族だって、うちや、マジ女の皆、雄ちゃんだって、皆辛いんや。悲しいんや。大きさや深さは人それぞれやけど、咲良を愛してた人達皆。何で、愛する人が亡くなって悲しいかわかるか?それは、咲良が愛した人それぞれに、思い出を遺していくからや…思い出を遺していくから、皆、悲しいんや!辛いんや!けど、その思い出を胸に、愛された者は生きていかないかんのや!」

「ウオオオオオオっ」

「今、あんたが死んだら、またうちらの思い出になるんよ?咲良の後を追って行った、大馬鹿者って思い出残すつもりなんか?」

号泣する俊太郎。

暫く、おたべは沈黙し、俊太郎の嗚咽が響く。

「俊ちゃん、顔あげや」

「?」

「うちをみいや」

俊太郎がゆっくり顔をあげる。

「!?おたべさん…」

そこには、洋服を脱ぎ、全裸のおたべが立っていた。

「どうしても、死ぬ言うんやったら、うちを抱いてからにしてくれへんか?」

「な、何言ってるんですか…出来るわけ…」

「出来るやろ!あんたどうせ、死ぬんやろ?」

「い、いや、あの…」

「どうせ、死ぬんやから、雄ちゃんや咲良に気兼ねせんでいいんやで?雄ちゃんにはうちが黙ってればわからんのやから」

「……」

「うちがな、最初に惚れたんは、あんたなんよ、俊ちゃん…」

「え?」

「覚えとるやろ?豪島の一件。あの時あんたは、潔く、うちらに詫びてくれた。自分に非はなくても…あの潔さに、うちはあんたに惚れたんや。どうせ死ぬんやったら、うちだけの思い出を遺してくれへんか?」

おたべが、俊太郎に迫ってくる。

「……おたべさん…」

「なんや?はよしてな?」

「全く…おたべさんには敵わないな…おたべさん抱いたら、クロに殺されますよ。服着てください」

「なんや…死なんのかい…」

「ええ…おたべさん…すいませんでした…」

死んだ目をしていた俊太郎に生気が戻っている。

「もう大丈夫なんやな?」

「ええ…」

おたべは気のせいか、落胆した様子で、服を着る。

「あーあ、卵が割れてしもとるやん!」