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おたべの説得で自殺を思いとどまった俊太郎。

「あんまり、食事してへんのやろ?うちが腕によりかけて、作ったるわ」

おたべが、食事の準備を始める。

その姿に、咲良を重ねる俊太郎。

俊太郎は咲良の遺影の前に正座し、咲良が亡くなって、初めて、手を合わせた。

「本当に、もう居ないんだね…咲良さん…」

「辛いやろけど、受け入れな…俊ちゃん」

「ええ…おたべさんのお陰です。ありがとう」

「…うちかて、偉そうに言ったけどな…雄ちゃんが突然いなくなったらどうなるかわからんよ」

「おたべさんは強い人だから大丈夫ですよ」

「そんな事ないわ…人間なんて弱い生き物や。一人では生きていけんやろ?だから、家族がおって、友達やなかまがいる…」

「そうですね…」

程なく、食事が出来上がる。

「はい、おまちどおさま。おたべさん特製の、中華風おじやや。召し上がれ」

「いただきます…」

「お口にあいますかどうか」

「美味い…」

「よかった。弱ってる時は、温かい物食べると、元気でるんよ」

「そういえば、咲良さんも同じ事を言ってたな…」

「そうなん?」

「ええ…俺が、就職活動で心が弱ってる時に、咲良さんが同じ事を言ってくれました」

「もう大丈夫やな?俊ちゃん」

「ええ…ご迷惑をおかけしました…」

「ホンマや…心配したんやで…気持ちはわかるけどな…」

俊太郎はおたべの作ったおじやを平らげた。

おたべは咲良の遺影に手を合わせた。

「ほな、帰るわ…頑張るんやで、俊ちゃん。うちも雄ちゃんも何かあったら、協力するから」

「ありがとう、おたべさん…ありがとう…」

俊太郎は涙を流す。

「そんなに泣き虫だったんか?」

「涙って枯れないものですね…」

「俊ちゃん…」

「え…!?」

おたべが俊太郎にキスをした。

「おたべさん…」

「キスくらいええやろ?二人の秘密…最初で最後や…咲良、堪忍な…」

再び、おたべがキスを求めてくる。

俊太郎も応えた。

深く…長い口づけだった…