
「ちょっと、こんなところでするんですか」
「触ってたら我慢出来なくて」
「誰か来たらどうするんですか」
「その時はその時よ。ほら、翼君だってやる気満々みたいだし」
ズボンのファスナーが下ろされ、翼のペニスは外気に触れた。
外はすっかりと肌寒くなっているが、熱を帯びたペニスにはかえって心地が良かった。
「美味しそう」
隆起した翼のペニスを見つめる久美の目は心なしか潤んでおり、扇情的な目だった。
愛おしそうに手で何度か竿を上下させると、おもむろに鈴口へ口付けをする。
「ここじゃまずいですって」
辺りはすっかりと薄暗くなったとはいえ、まだまだ数十メートル先まで見渡せる明るさだ。
しかも、不審者の出現により、警察官が巡回のパトロールをしているようだった。
それにも関わらず、こんな破廉恥な真似――まして学生同士がこんなことをしていたら、注意どころでは済まされそうになかった。
「しつこいなあ。私がしたいって言うんだから、いいじゃない。どうせ減るものじゃないし。しかも気持ちいいなんて、断る理由がないわ」
だが久美は、そんなことは関係ないのだといわんばかりに、ペニスを猫のようにペロペロと舐めている。
彼女の舌のザラザラした感触は、また女性器の中とは違った感触だが、気持ちがいいことには変わりない。
「ああ、久美さん……」
やがて、舐めるだけで足りなくなったのか、久美はペニスを口に咥えた。
口内は温かく、舌が絶えず動き回っていて、翼は彼女の頭に手を置きながら押し寄せる快楽を堪えていた。
「そろそろ出そうな感じ?」
口の中へ入れたペニスが明らかに変化を起こしていることに気付いた久美は、口から出すと手で愛撫した。
唾液とカウパーの入れ混じったペニスからは、手の摩擦によってクチュクチュとした音が聞こえる。
「で、出ます!」
翼の声に素早く反応した久美は、先端から放たれた白濁の液体を口の中へと招き入れた。
「たくさん出たね。溜まってたんじゃない」
口から放出された精液を掌へ吐き出すと、久美の手には白くてネバネバした液体が広がった。
彼女の言うように、翼は最近真子とセックスはおろか、オナニーすらしていなかった。
たまたま真子の生理が始まり、セックスに慣れた翼はオナニーによる快楽では物足りなかったのだ。
「もういいでしょ。帰りましょうよ」
「待って。最後までする」
掌に乗せられた精液をジュルっと音を立てながら吸うと、久美はスカートの中から下着を脱がした。
「欲しい?」
「いりません」
「むー。どうして君はそんなに欲望に逆らうかなあ。女の子の下着を欲しがってもいいと思うんだけどな。そんなに私って魅力がないのかなあ。傷つくよ、ほんとに」
ブツブツと言いながら、久美はカバンの中から避妊具を取り出し、まだ固さが残る翼のペニスに装着させた。
「いや、別に久美さんが魅力ないというわけじゃなくて、場所が悪いんですよ、場所が」
「だったら今からホテル行く? 私、そこまでお金を持ってないし、“ここ”も持つ気がしないな」
翼の手を取ると、久美は自らの女性器へと導いた。
久美の言うように、“そこ”はすでにペニスを受け入れる準備が整っていた。
「ねえ、いいでしょ。あんまり女の子にそういうこと、言わせないでよ」
濡れた瞳で見られ、翼は観念するしかなかった。
誰にも見つかりませんように。
そう願いを込めながら、壁に手を付いた久美の女性器へと背後からペニスを突き刺した。
「あっ、そんな、いきなり激しいよ」
「久美さんが誑かせたんでしょ。責任とってください」
最初からラストスパートのように抽送を始める翼。
「やっ、声が出ちゃう」
「聞かせてやりましょうよ。誰かに見られたくて仕方がないんでしょ」
荒い息遣いの中、肉と肉とがぶつかり合う音が住宅街に響く。
「やだあ、誰かに見られるのはいやあ」
「わがままな人ですね。さっきまでの威勢はどこにいったんですか」
「そんなこと言ったって……」
「ほら、久美さん、見てください。あの家のベランダから誰かが見てますよ」
「嘘!」
もちろんそれは嘘であった。
しかし、久美は翼の嘘に騙された。
誰かに見られているという意識から、激しく絶頂する。
「見られてイったんですか。久美さんって、Sっ気があるように見えて、実はドMなんですね」
「違う、それは違うのお」
言葉とは裏腹に、久美の膣がキュウキュウと締め付けて来る。
翼ももう限界だった。
「そろそろイキそうです。久美さんも誰かに見られながらイっちゃうんでしょ」
「いない、いない、絶対いない! ああー、もうダメエー!」
口元を手で押さえるが、久美の声は漏れ、同時に二人の身体は一瞬時が止まったかのように固まった。
唯一動いていたペニスが、ドクドクと薄いゴムの中へと白濁の液を注いでいた。
「翼君って、セックスの時だけ人格が変わるよね」
下腹部に残る快楽の余韻。
ズボンの下にあるそれを感じながら二人は帰路へと着く。
「そうですかね。あんまり自覚はないですけど」
「絶対そうだよ。普段は優等生ぶってるくせしてさ」
幸いにも、誰かに見つかってはいないようだ。
だが、こんなことが何度もそう続くわけがない。リスクを背負ったセックスなど、真子だけでいいのだ。
「別に優等生ぶってなんていませんよ。そんなことを言うのなら、もう久美さんとエッチはしちゃいけませんね」
言い終わると、翼の尻が叩かれた。
「それは却下」
「これじゃあ誰が不審者か分かりませんね」
「そうね。あっ、ここでいいわ。今日は送ってくれてありがとう。“また”しようね」
立体駐車場の前に行くと、久美はそう言ってウインクをした。
リスクのあるセックスは真子だけで充分――。
「……ですね」
頭の中ではそれが分かっているのに、“また”を望んでいる翼がいた。