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宮脇咲良 壊れるほどの欲望を抱いて

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「ああああああ……」

 

 虚ろな目で壊れた人形のように口呼吸をしている少女を見下ろしながら、奥野正義は煙草を吸っている。

 先ほどまでの乱交のせいで、むせ返るような独特なにおいが満ちていた。

 

 飛び散る精子と汗。会場の隅には、咲良が出した排泄物があった。

 穢された少女――宮脇咲良は、秘部から大量の精子を吐き出し、大の字で横たわっている。

 端正な顔は、ぐちゃぐちゃに乱れ、生きているのかさえ分からないほどに衰弱していた。

 

 だが、正義に罪悪感はなかった。そんなものは、とうになくなっていた。

 彼女が悪いのだ。テレビなんかに出ているから。

 アイドルにさえならなければ、こんなことにならなかったはずである。

 

「けけけ。ずいぶんと派手にやりましたな」

 

 しわがれたて、聞き取りづらいが聞こえた。

 正義は煙草を火の点いたまま床へ捨てた。

 

「俺じゃねえよ。やったのはキモヲタたちだ」

 

 サイリウムを振り回しながら、腹の突き出た小汚い中年男に犯される屈辱はいかほどか。

 

「けけけ。でもあんたが望んだんだろ。同罪じゃよ、同罪」

 

 正義は興味がないように、また煙草を取り出し、火を点けた。

 紫煙をたっぷりと口から吐き出す。

 

「どうでもいいよ。で、何の用だ?」

 

 前置きなんてもう十分だった。

 老人の目の色が変わる。

 

「いや、お前さんの様子が気になってね。ずいぶんと長生きじゃないか。“普通に”暮らしていたら、さぞかしいい暮らしが出来ただろうな」

 

 老人が見てきた中でも、年齢はあるだろうが、正義は特に長生きだった。

 

「俺にもう“普通”はない。そんなものは捨てた」

 

 あるのは、止めどない欲望だけだった。

 次にどんな女を犯そうかと考えている。

 

 そうだ。あのまどかという女がいいのではないだろうか。

 咲良とは違って、気の強そうなあの顔を屈辱に変えさせたのならば……。

 考えるだけで、正義のペニスはみるみるうちに勃起し始めた。

 

「そうか、そうか。さすがだな」

 

 正義の答えに満足したのか、老人は笑みを浮かべたまま何度も頷いた。

 

「あああああああ……」

 

 一段と大きくなった咲良の声。

 すると、股間から尿が溢れ出て来た。どうやら自力で排泄を抑えられなくなったようだ。

 

「ずいぶんと可哀想なことで。まだ若いのに」

 

 この子の将来はもうなくなったも同然だ。老人は哀れだといわんばかりに、顔を振った。

 

「どうせ他人事だろ。そんなこと、微塵も思っていないくせに。おい、起きろ」

 

 足で咲良の頭を小突く。が、彼女の反応はずっと同じだった。

 

「こりゃあダメだな」

 

 何度か小突くが、一向に反応を見せない咲良に舌打ちすると、正義は諦めた。

 

「どこへ行った?」

 

 気が付けば、老人の姿はなかった。

 いつもそうだ。突然自分の前に現れて、突然消える。

 神出鬼没な彼のことを気になるといえば気になるが、詮索をしても無駄なはずだ。

 

 それよりも次は誰を抱こうか。

 欲望だけが、正義を唯一支えている。

 

 たとえ、身を滅ぼすほどのものだとしても。