テレビ画面に映るエンドロール。
何気なくレンタルビデオ屋で借りた映画が終わっていく姿を見ながら、私は吐息をついた。
冴えないバーテンダーが主人公のこの映画は、どうやら人との繋がりを描いた作品のようだ。
閑古鳥の鳴く店。そんなバーテンの元へ来た美しい女性。彼女よりも、多くの女性たちが登場したが、彼女以上に美しさを持つ人はいなかったと思う。
だが、彼女は姿を消してしまった。彼と心を通わせたのは、ほんの数時間に満たない。もしかしたら、人はそれだけでも深く繋がるのかもしれない。
過ごした時間の長さよりも、深さがあればいいのだ。
その後も、バーテンの元へは色々な女性たちが現れた。
同性愛者もいれば、彼を騙そうとした人もいる。
既婚者に惚れて、幽霊に憑りつかれる。
コメディのようで、コメディではない。
だって、そこまで笑えないもの――。
チャップリンのような喜劇ではない。
かといって、戦争を描いた悲劇でもない。
じゃあ、これは何?
テレビ画面が、パッと変わる。
最初の画面に戻ったのだ。
振出しに戻る。
私の人生は、いつ振出しに戻るのだろう?
時間だ。ピアノの練習を始めなくては。
私はソファから立ち上がる。
あの人は今日もいるはずだ。
この夏空の下、ずっといるのだ。