文字サイズ:

大島涼花 秘密基地

b28674b202a71e0a72e81d49.jpg




「なんか変な感じい」


 淫らな吐息を吐き出しながら、大島涼花は快楽に酔いしれている。

 快楽――そう。子供心に、それは快楽だと分かっていた。

 いけないことをしてる。それも、涼花の快楽に拍車をかけた。


 同級生があられもない姿を見せているのは、平野正樹が原因だった。彼が涼花の女性器をペロペロと犬のように舐めているからだ。


 蝉の鳴き声が絶えず聞こえてくる。

 小屋の暑さは、外と変わらなかった。正樹も涼花も、汗でTシャツが背中に貼り付いている。


「ああ……」


 涼花の口から、自然と声が漏れ始めた。

 正樹は無我夢中で、涼花の女性器を舐めた。




 夏休みも中盤に差し掛かっていた。

 宿題を放り投げて、正樹や涼花らは、毎日遊びほうけていた。

 おかげでとても日焼けをして、身体は小麦色になっていた。


 この日も、友達と遊ぶ予定だったが、塾や旅行などでみんな欠席してしまい、残ったのは正樹と涼花の二人だけだった。


「どうする?」


 麦わら帽子を被った涼花が訊いてきた。

 午前中だというのに、もう外の暑さは三十度を超えていた。


「うーん。リョーカって、秘密基地に行ったことある?」


「秘密基地? そんなのあるの?」


 友達同士の間では、秘密基地が流行っていた。が、そこは女人禁制だった。


「うん。女はダメだって言ってたけど、リョーカなら大丈夫だと思う」


「それって、あたしを女だと思っていないから?」


「そう。だってリョーカって女っぽくないし」


「どっからどう見ても女だろ」


 涼花の蹴りが飛んできて、正樹の太ももを蹴飛ばした。

 

「痛いなあ。連れて行ってやらないぞ」


「それはダメ。早く行こうよ」


「わがままだなあ」


 蹴られた太ももを擦りながら、正樹は歩き出した。


「ここだよ」


「へー。こんなところにあったんだ」


 いつもの遊び場所から五分ほど歩いたところに秘密基地はあった。

 と、いっても掘っ建て小屋に近いデザインだ。


 中へ入ると、木の香りに包まれた。

 木くずのにおいが強い。


「あっ、なんか落ちてる」


 興味深そうに辺りを見渡していた涼花が声を上げた。


「エロ本だ」


 涼花が見つけたのは、官能漫画だった。半分ほど破けた表紙には、胸の大きい女が描かれている。


「エロ本だ、エロ本」


 見慣れていない雑誌に、涼花は飛び跳ねて喜んだ。


「ちょっと読んでみようよ」


「お前女だろ? これは男が読む物だよ」


 取り上げようと手を伸ばす正樹の手を、涼花は払いのけた。


「いいじゃん、別に。じゃあ一緒に読もうよ」


 正樹だって年頃の男の子だ。こういった本に興味はあった。


「へー。こんな風になってるんだ」


 窓を開けていない室内は、気温が上がりっぱなしだ。

 そんな中で、正樹と涼花は食い入るように雑誌を見ている。


「気持ちいいのかな、こんな風にされると」


 漫画では、女が男の性器を舐めていた。


「さあ?」


「ちょっとやってみない?」


 八重歯を見せて笑う涼花に、正樹はごくりと喉を鳴らした。




「なんかおちんちんって、ウインナーみたい」


 同級生のペニスを見られる。正樹は顔から火が出そうだった。


「触るよ」


 正樹が黙って頷くと、涼花の手がペニスへ伸びる。


「中に何か入ってる。どっちがおちんちんなの?」


 興味深く触っていると、皮の中にピンク色の物体を発見した。

 中を見ようとするが、正樹が痛がりはじめて、見れなかった。


「じゃあ、舐めるね」


 漫画の中では、女がペニスを舐めると、男は恍惚の顔を浮かべていた。

 小便臭いペニスを、涼花は思い切って口に入れる。


「痛い! リョーカー痛いって!」


 八重歯がペニスを突き刺し、堪らず正樹は悲鳴を上げた。


「あっ、ごめん」


「もうちょっと優しくやってくれよ」


「あんたが脆いだけだだよ」


「女のリョーカには分からないだろうけど、痛みに弱いんだよ、ここは特に」


 ムッとしたが、尋常じゃない痛がり方に、涼花は怒りをぐっと飲み込んだ。


「分かったわよ。もう少し優しくすればいいんでしょ」


 だが、その言葉とは裏腹に、何度やっても正樹は痛がるばかりだった。

 涼花の八重歯がどうしてもペニスに突き刺さってしまうのだ。


「もういいよ」


 半泣きになった正樹は、涼花からペニスを離した。

 ペニスには、彼女の歯形が残っていた。


「ごめん」


 痛々しいペニスを見ていると、涼花にも同情心が湧いた。


「じゃあ、今度は僕の番」


「え? いや、いいよ」


 漫画本には、男が女の性器を舐めている描写もあった。

 正樹は今度は自分の番だと主張してきたが、涼花は断った。さすがに、人から舐められるのは恥ずかしかった。


「ずるいぞ。今度は僕が涼花のを舐める番だ」


「やだよ、恥ずかしい」


「僕だって恥ずかしかったんだから。ほら、早く脱げよ」


 辺りに人がいないことを確認すると、涼花は観念したようにショートパンツに手をかけた。


「ちょっと、見ないでよ」


「無理言うなって。それに、これからどうせ見るんだから」


 下着まで脱ぐと、涼花は恥ずかしさで顔が爆発してしまいそうだった。


「これが女のか。なんかグロテスクだな」


 性器を指で広げられ、ベタベタと触られる。先ほどまで自分が正樹にした行為だが、こんなにも恥ずかしいとは。


「あれ? なんか濡れてる。お前、漏らした?」


「違う! 漏らしてなんかいない!」


 手を触れると、透明な糸がツーッと指先に付いた。納豆のようだと、正樹は思った。


「じゃあ、舐めるからな」


 小便臭いものを舐めるのは抵抗感があったが、オスの本心には抗えなかった。正樹は恐る恐る舌を伸ばした。




 ぺちゃぺちゃと、犬がミルクを舐めるような音が聞こえる。

 涼花の息は荒くなっていた。明らかに、舐め始めた当初よりも、正樹の舌使いは(なめ)らかになっていた。


「んんっ、ふぅ」


 女っぽい声を出すな――正樹はそう思ったが、口には出さなかった。いつもの彼女ではない。しおらしさと、色気があった。


「だ、ダメ、なんかきそう」


 一段と大きく声を上げると、涼花の身体が大きく跳ねあがった。




「なんか涼花っぽくなかったな」


 行為を終えた二人は、秘密基地から出て、いつもの遊び場にいた。

 シャツは汗でびしょびしょだったが、炎天下の空の下にいたら、気が付いたら乾いていた。


「うるさい」


 涼花の小さな手が正樹の腹を殴った。

 ペニスに突き刺さった八重歯から比べれば、まるで痛さを感じなかった。


「また秘密基地に行こうな」


「……機会があったらね」


「そうだな。機会があったら行こう」


 入道雲を見ながら、正樹は答えた。