「考えすぎだよー。いちいちそんなの気にしてたら先生やって行けないよ?」
「うーん・・・それもそうか〜」
「でも、心配してくれてアリガトね?私の事気に掛けてくれるんだ?」
「え・・・そ、そりゃ」
と赤くなってしまうウブウブだった俺。そうしてパジェロは目的地の港へと着いた。
「海からの風って気持ちイイ〜♪あ、自販機あるからコーヒーでも飲もうか?」
「じゃ僕奢りますよ、伊達にバイトで稼いでませんからね」
「お、男前な事言うじゃん。じゃあ奢ってー♪」
まるでデートだなと内心ドキドキだったんだが、もう夕日も沈み始めてもと来た
道をパジェロは走り出した。
「・・・もうじき社会のK先生退院してN先生辞めちゃうんだよね、寂しくなるな〜」
「そんな事ないよ、彼女がいれば寂しくなんかないでしょ?」
「彼女なんて居ないよ?出来るかどうか・・・」
「うっそだー、U君可愛いもん、私が同い年だったら放っておかないよー」
「え!?・・・僕も先生みたいな人が同級生だったら放っておかないよ?」
「本当?じゃあ同じ年じゃなかったら彼女にしてくれないの?」
「えええ!?そ、そんな事ないと思うけど・・・先生彼氏いるんじゃないの?」
「それがいないんだな〜。U君の事、可愛いからすぐ名前覚えたって前に言ったでしょ?」
「うん・・・」
「本気ですっごい可愛いって思ってるんだよ?」
「で、でも、僕背低いし、ずっと背が高くてハンサムな生徒とかたくさんいるよ?
お気に入りの生徒とか他にもいて、告白されたりとかされたりしてるんじゃないの?」
「告白はされてないし、お気に入りは他にもいるけど、一番可愛くて好きなのはU君だもん」
「ぼ、僕可愛くなんかないよー」
まさか、そんなハズはない、嬉しいけど信じられない!
思わせぶりな先生の言葉に今までの和やかな雰囲気はどこへやら、すっかりテンパる俺。
ドライブの誘いがあった時から感じていた現実感のなさが急激に強まり、居心地の悪さを感じ始める。
「せ、先生、生徒からかっちゃダメだよ〜。」
「・・・迷惑?」
「め、迷惑じゃないけど・・・」
山道を走っていたパジェロがパーキングエリアへと止まる。
そして近づいてくるN先生の顔。俺は先生から目がそらせないで居た。
「今すっごくU君とチューしたい。ダメ?」
どアップのN先生の顔。息が詰まる。やっとの事で声を絞り出す俺。
「ダメじゃない・・・」
そして重ねられた唇。何故か俺はその時、ファーストキスの感触よりも車の中で聞こえるウインカーの音の方が気になっていた。
触れるだけのフレンチキス。頭が真っ白になってる俺から先生は唇を離した。
「キスしにくいよ、顎出して唇ちゃんと重ねないと」
「あ・・・ごめんなさい」
「じゃあ、もう一回するよ?」
今度は言われたように顎を出す。さっきよりもしっかりと押し付けられてくる唇。
この後どうしていいのか分からずにいると、先生の舌がにゅるり、と中に入ってきた。
なすがままに貪られている俺。初めての気持ちよさにぼーっとしていたが、
このままじゃいけない、と僅かなプライドに押され、先生の舌の動きを懸命にトレースし、舌を絡め合う。
どれくらい時間が経ったか、先生の口が離れていって、俺は何も考えられずに居た。
「・・・U君、キスしたの初めて?」
「うん・・・・」
「すっごく頑張ってたね、先生気持ちよくなっちゃった♪」
我に返ると、もう外は夕暮れを過ぎて暗くなっていた。
「ねぇ・・・バイトって夜やってるんだよね、帰りいつも遅いの?」
「え?ああ、うん、居酒屋だから店は11時までだけど、高校生だからって
10時になると帰らされてるけど・・・どうして?」
「じゃあ10時まで先生に付き合って?」
「え・・・?う、うん」
鈍感な俺だけどこの状況で先生が何を望んでいるか分からない程馬鹿じゃない。
そしてパジェロはまた走り出した。